京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto

column55 昔の家はなぜ寒い? 2020.09.23

住まいと健康の深くて長い関係

新型コロナウィルスの感染拡大で、家で過ごす時間が増えました。
家族の、社会の、人が暮らす都市全体の健康を考えることも増えました。
住まいと健康の、深くて長い関係を考えます。

寒い家はカラダに悪い。
こうと言われると「いや、厳しい環境に身を置いてこそ、人間は鍛えられるのだ!」と言いたくなりますが、残念ながら事実です。
厚生労働省の調査で、断熱改修前後で住人の血圧が低下したとの報告がありました。
暖かい家が、カラダにいいのです。
よく知られるように高血圧は生活習慣病の原因の一つですが、室温が低いと血圧が上がって高血圧を招きやいのです。
また、住宅内に温度差があると、血圧が乱高下して様々な健康リスクを高めます。

では、日本の家はなぜ寒いのでしょうか。
断熱性能が低い事も原因です。
そして、気密性能が低い、「C値が高い」ことも原因です。
気密性能の指標「C値」は、住宅の総隙間面積を延べ面積で割った数値。
低いほど気密性能に優れます。

例えば冬のある日。
昭和初期建築の、古いお屋敷にいると想像してください。
気密度が低いため、室内には窓や壁の隙間から風がどんどん入ってくる。
室内の空気が外部の風で、自然換気されてしまいます。
でも室内ではあかあかとストーブが焚かれ、顔の辺りはもわんと暖かい。
同時に、足元からスースー冷気が入ってきます。
暖気は軽いため天井から抜け、床下から重くて冷たい空気が侵入します。
これも換気、温度差による自然換気です。
昔の家は気密度が低いため、必要以上に自然換気量が増えます。
暖房をつけ続けないとすぐ冷え始めるのは、この自然換気が理由です。
日本建築学会の「住宅における換気量の簡易予測法」チャートを使えば、この現象を換気回数の数値で確認することができます。

1998年に発表された論文は、モデル住宅を建てて室温を20度に設定し、立地条件や外気温、風速、換気方法に変化をつけて換気回数を測定した実験結果です。
室内の換気能力まで考慮した、引用されることの多い信頼度の高い論文ですが、原図は見づらいため、このコラムではわかりやすく表示しました。

事例1
一般的な住宅地に建つ古い家(C値12)で外部風速5m(普通の風)、外気温は0℃で室内温度は20℃(内外の温度差は20℃)という条件です。
「事例1」右のグラフが条件を表します。
左側グラフで、この場合の換気量は1時間あたり1.7回程度と読み取れます。
内外の温度差20℃は真冬の温度差ですが、約35分に1回は、自然換気で室内の空気全てが入れ替わる結果となりました。
風速8m/s(”やや強め”より弱い風)なら、換気回数は1時間に約3回、実に20分に1回は室内の空気が総入れ替えしてしまいます。
暖房を切った途端に部屋が冷えてくる・・・は、まさにこの現象。
できればこういう家には住みたくないけど・・・現存する日本の家屋の4割程度はこの状態、と言われています。

では同じ条件の場合、高気密住宅の換気回数はどうでしょうか?

→column56 ”C値1”なら安心です 2020.09.30

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

はなあふ家
健康と省エネに影響する気密性能
断熱改修の前後で血圧に有意の差が発生
C値の定義
日本建築学会「住宅における換気量の簡易予測法」
事例1 上記に基づいて再構成
  1. 54急増中!排水のご相談
  2. 53コロナの時代の家づくり
  3. 52照明にもメリハリ!
  4. 51明るい部屋が好き?
  5. 50愛される理由
  6. 49光と健康の関係
  7. 48省エネ住宅の現在
  8. 47住宅ローン減税の弾力運用
  9. 46断熱気密性能の指標
  10. 45窓を開けたい季節
  11. 44緊急!住まいの補助2
  12. 00バックナンバー