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column121 令和の時代の家づくり 新築か、価格か、質か、それが問題だ 2025.05.22

「住宅市場動向調査」令和5年のデータから 新築志向と価格志向

国土交通省「令和5年住宅市場動向調査」から注文住宅の実際を見る4稿目。
前稿では、上昇が続く注文住宅の購入費を取り上げました。
コストアップに連動して価格高騰が続くこの環境下、実際に住宅を購入した世帯はどのように選択したか。
設問「住宅選択の理由」で、志向の違いが現れます。

新築分譲戸建(建て売り)を選択した世帯の選択理由トップは「新築だから」、ついで「戸建住宅だから」。
新築分譲マンション購入世帯もやはりトップは「新築」、2位は「立地環境」。
戸建・マンションにかかわらず、分譲住宅購入世帯の根強い新築志向がうかがえます(グラフ1/2)。

中古戸建の購入世帯は「価格」「戸建だから」。
中古マンションの購入世帯では「価格」「立地」が、それぞれ2トップでした。
中古物件購入世帯は「価格が適正」を、また中古を含む分譲住宅・マンションでは立地環境の良さが、それぞれ重視されています。

選択の背景にあるもの

設問「設備等に関する選択理由」の回答でも、取得した住宅ごとの考え方の違いが見えました(グラフ3/4)。
新築・中古、戸建・マンションを問わず、注文住宅以外で共通して高いのは「間取り・部屋数」と「面積」。
より広い家、より多くの部屋数を求めて住み替えに踏み切る世帯が多く、新築も中古も戸建もマンションも、分譲住宅の購入世帯がこの点を重視するのは容易に想像できるところです。

では注文住宅を取得した世帯は、何を重視したのでしょうか。

住宅に求めることは

注文住宅世帯の選択は、トップが「高気密高断熱」2番目に「災害安全性」(グラフ4)、3番目が「デザイン」で、分譲住宅の購入世帯で重視される「間取り・部屋数」は4位という結果でした。
注文住宅は建築主が「建てる」家。
住宅には広さだけではなく、住み心地や省エネ、建物の安全性などより高度な機能を求める、そんな層が注文住宅を選択するようです(グラフ4)。

注文住宅は購入資金の総額が他より高額ですが、実は資金の総額が年収の何倍に当たるかを示す「年収倍率」も、ほかの選択肢より高いことがわかります(グラフ5)。
購入資金を年収の4倍前後に抑える堅実な中古取得世帯、年収の5倍前後で分譲を選ぶ新築重視の世帯。
購入費が年収の7倍前後に及ぶ、注文住宅世帯。

それぞれの選択

住宅の取得には3つの方向性があるようです。
新築であることを重視する新築分譲(戸建・マンション)購入世帯、価格志向の中古(戸建・マンション)購入世帯、そして住宅の質にこだわる注文住宅取得世帯。

家は暮らしの礎であり、家族が暮らすスペースであり、住む人を幸せにする特別な場所でもあります。

グラフ:国土交通省「令和5年住宅市場動向調査」から作成

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

グラフ1 取得住宅別 住宅選択の理由
グラフ2 取得住宅別 住宅選択の理由 top3
グラフ3 取得住宅 設備等に関する選択理由
グラフ4 取得住宅 設備等に関する選択理由 top3
グラフ5 購入資金の総額と年収倍率(注文住宅は土地代含む)
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