京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto

column124 家づくりの転換期〜家づくりのコスト〜 2025.09.26

2024年の家づくりのコスト

国土交通省発表の「2024(令和6)年-住宅市場動向調査」から、住宅の一次取得世帯(住宅を初めて取得)に注目します。

まずは気になる家づくりの予算、住宅購入費について、三大都市圏での金額を確認します(グラフ1)。
新築の場合、土地購入を含む注文住宅は5,876万円(全国)。
これは全国平均なので、土地代の高い都市部ではより高額(6000万円以上?)と推察されます。
分譲戸建(建売)なら4,310万円、分譲マンションは4,366万円でした。
中古物件では戸建で2,869万円、マンションで2,857万円。
新築物件と比べて、中古物件は35~50%の省コストでした。
2023(令和5)年との比較では、新築分譲マンション以外は中古物件も含めて、いずれもコストアップとなりなりました。

新築分譲マンションが前年より減額したのは、ちょっと意外です。
報道で見るように、東京23区の平均価格が1億円を超えるなど、都心物件の供給減少と価格高騰は鮮明です。
そこでマンション購入のボリュームゾーンが、割安感のある郊外や、より狭い物件にシフトした結果、購入費の平均額が下がった、と報告されています。
同様の理由でしょうか、10年前なら戸建19年、マンション22年だった中古物件の平均築年数は、直近では戸建25年、マンション30年と伸びています(グラフ2)。

住宅建築コストの上昇は続く

注文住宅のコストをもう少し見ましょう。

新築で土地購入のない住宅建築費は、三大都市圏平均で4,588万円(グラフ3)。
前年からは10%以上、10年前と比較すると50%超のコストアップとなりました。
建て替えの場合はどうでしょうか。

予算規模の大きい二次取得世帯も多く含まれる建て替えは、新築より建築費が大きくなる傾向があります。
果たして、建築費の平均は5,214万円、新築より10%以上コスト高となりました(グラフ4)。
注文住宅の建て替えは、スコアの中では少数派で年ごとのばらつきが大きくなりがちですが、10年前と比較すると70%近い増額となりました。

予算をめぐるトレンドは

注文住宅の建築費は、2021年以降の上昇率が際立ちます(グラフ3,4)。
住宅種別の10年間の推移でも、やはりこの数年の注文住宅の上昇が目立ちます。
逆に注文住宅以外は、10年間で大きい増減はありません(グラフ5)。

トレンドとしては
・注文住宅の予算規模は拡大している
 = 購入者が高収入世帯にシフト
・分譲戸建・マンション、中古戸建・マンションの予算規模は大きな変動なし
 = 購入者の世帯収入は10年前と大きく変わらない
いわゆる「二極化」という結論になるのでしょうか?

もう少し、家づくりの現在地を探ります。

グラフ:国土交通省「住宅市場動向調査」から作成
*グラフ5の注文住宅は全国、その他は三大都市圏

→column125 フラット35利用者調査から 2025.10.03

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

グラフ1 取得住宅別一次取得世帯の住宅購入資金
グラフ2 三大都市圏 購入した中古物件の建築時期
グラフ3 三大都市圏 新築 住宅建築資金
グラフ4 三大都市圏 建替 住宅建築資金移
グラフ5 三大都市圏 一次取得世帯の住宅購入資金推移
  1. 123取得世帯のプロフィール
  2. 122家づくりの転換点
  3. 121新築か、価格か、質か
  4. 120家は3000万円で建つか
  5. 119家づくりの資金計画
  6. 118家づくりのコスト
  7. 117地震保険と耐震化
  8. 116地震と地震保険
  9. 115令和6年1月1日能登半島地震
  10. 114木造住宅の全館空調
  11. 113全館空調のメリット
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