hiroba 100年住宅のリフォーム
母屋の上棟は明治後期、地域の名建築と親しまれる伝統家屋です。
100年を超す木造住宅は無断熱の非耐震住宅でもあり、住む人の安全と快適性の確保が課題でした。
基礎から構造を補強し、床・壁・天井には断熱材を、窓や扉を気密化して、耐震化・断熱化・気密化する。
外観を保ったまま屋内を現代の住まいに変貌させる、歴史の歯車を一気に進めるプロジェクトになりました。
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工事の全容
工事の全容
今回のリフォーム箇所は広いお屋敷の、母屋から居室でつながるLDKと水回り。
建築主が母屋に暮らしながらの工事で生活への影響が最少になるよう、解体工事には慎重を要しました。
追加工事の発生などもありましたが、建築主の理解と忍耐で、解体から5ヶ月後に無事、竣工を迎えることができました。
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解体工事
解体工事
リフォーム工事の開始は家財の搬出そして解体へ。
解体工事に取り掛かると、虫害や複数回の増改築による構造的な不安要素が五月雨式に見つかりました。
解体工事を進めつつ問題箇所への対応を協議し、再設計、見積、追加工事の決定となりました。
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基礎工事
基礎工事
解体工事が完了すると、すぐに基礎工事が始まります。
床下にある基礎は生活の中で気にかけることもありませんが、建物の支持、断熱、湿度や虫害の抑制など、建物の大切な役割を担います。
当該物件は100年前の住宅、基礎に対する考え方がまるで違います。
独立基礎も布基礎も見当たらなかったり、延石様の石が基礎の役割を担っていたり、総合的な脆弱さが目立ちました。
そこで鉄筋を組みコンクリートを打設して基礎底部と布基礎を作り、建物を支持できる基礎を形成しました。
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木工事
木工事
解体前の調査で柱の腐食や梁の切り欠きなど、軸組の問題点も多数見つかりました。
土台・柱・梁・金物で構造の補強を行い、耐震性能の向上を目指しました。
地震被害のなかった古い家で「今まで大丈夫だったから、まだ大丈夫」と聞くことがあります。
実は建物は振動を受けるたびに弱くなる性質があり、今までの幸運をこれからも享受できる、とは限りません。
理論に基づいた耐震化が求められます。
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外壁工事
外壁工事
室内の工事と並行して、外壁の工事も進みます。
今回は掃き出し窓周辺以外の外壁は工事対象としない方針でしたが、工事途中に必要性が明確になりました。
建築主の了解を得た上で該当部分を設計し直して再見積、外壁工事が追加されました。
リフォーム工事の場合、このようなケースがよくあります。
プロジェクトの開始時にその場合の対処について、予算・工期等の方針を立てておく必要があります。
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仕上げ工事
仕上げ工事
木工事が終了すると室内では珪藻土が、外部では外壁の仕上げにかかります。
システムキッチンやUB、配線配管は木工事期間中に施工し、珪藻土終了後に機器の取り付けなど仕上げが始まります。
水栓やエアコン、照明器具が付き、美装工事が済むと、工事現場は家に変貌します。
工事期間は約5ヶ月、建築主の理解と忍耐があってゴールにたどり着くことができました。
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玄関
玄関
古家の玄関とリビングルームを足して土間にした、新居の玄関です。
玄関先で話して帰る来客の多いお家柄、ちょっと座って話せる土間スペースが重宝します。
すぐ横には事務室が控え、奥の家族のスペースとは障子でゆるく区切られます。
新しい機能として、玄関の天井には空気を清浄化する装置も設置しました。
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玄関から
玄関から
太鼓張りの障子の向こうは、家族のダイニングとキッチン。
キッチンの向こうの窓から注ぐ光が届き、障子を閉めても開けても、明るい玄関です。
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玄関収納
玄関収納
広い土間の一部は大きな玄関収納で、スキー板など背の高いものもラクラク収納。
土間スペースは古家でリビングだったので、大きな掃き出し窓が残ります。
玄関は断熱扉に、掃き出し窓も断熱窓に替えて、明るく快適な玄関になりました。
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キッチン方面
キッチン方面
ダイニングスペースの向こうのキッチンは、食卓からは手元が見えません。
キッチンの位置と広さは古家と同じですが、最新のシステムキッチンと造作家具のカップボードを導入。
明るく使いやすく収納たっぷりの、理想のキッチンになりました。
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造作収納家具
造作収納家具
システムキッチンは通常よりひとまわり長い3,500タイプです。
キッチンの背面には、同じ高さで同じ長さの大きなカップボードを造作しました。
サイズや材質、収納のサイズや種類、ハンドルなど金物まで細かく指定するので、ぴったり収まる家具が出来上がります。
面材はフローリングに合わせて面材はウォールナットに、白い部分をアクセントに仕上げました。
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キッチンから家事室
キッチンから家事室
広いキッチンの向こう側には家事室を設けました。
キッチンからの最短導線に、家の事務機能・収納・洗濯機・乾燥機を集約。
家事室の奥は元々の別棟で浴室やトイレの水回りがあり、物干しに通じる勝手口も。
エアコンや大きな窓を備えた家事室は、家事が楽しくなる空間です。
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家事室からキッチン方向
家事室からキッチン方向
ダイニングからキッチン・家事室・洗面脱衣に続くホールまで壁はなし、こんなに広いと冬は寒いのでは?
リフォームの原動力になった室温対策は、建物の断熱化と気密化、そして換気空調計画で克服しました。
広いLDと家事室、通路部分には天井式のエアコンを設置。
換気を熱交換式にして、全館空調住宅のような快適な空間を作りました。
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リビングダイニング
リビングダイニング
古家の縁側を、リフォームでリビングに取り入れました。
部屋を広く開放的に、そして明るく緑が目に入りように。
建築主の絵画コレクションを楽しめるよう壁面を強化し、エアコンや換気扇・照明器具は天井に設置。
古家の伸びやかさを損なわなず、安全で快適な住まいになルよう工夫しました。
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キッチンから玄関
キッチンから玄関
キッチンに立つと、正面に玄関前庭の緑が飛び込んできます。
視線の先に緑と光があることで、室内が実際以上に広く感じれられます。
天井までの障子が光を通すので、締め切っても室内が孤立しません。
視線を奥へ外へと誘導することで、水平方向の吹き抜け効果が得られます。
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リビングからダイニング
リビングからダイニング
庭に面したリビングの方から奥を見ると、上から光が落ちるダイニングの壁が目に入ります。
天井スリットに照明を仕込アルコーブ照明は、壁に奥行きをもたらす演出です。
壁面を強化してあるので絵画を掛けることも、カウンターに小物を並べることもできます。
好きなものに囲まれる、家じかんをより楽しくする工夫です。
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洗面室ホール
洗面室ホール
長い歴史の間に数度におよび増改築を重ねた古家は、間取り・構造・配線・配管・屋根に到るまで、迷路のような状態でした。
副産物として棟をつなぐナナメの通路ができたり。
その不思議な廊下に古家のシャンデリアを設置したら、優美なホールが誕生しました。
このホールがリビングや母屋と水回りをつなげます。
古家では外気温と変わらない環境でしたが、開口部を気密化し、天井にエアコンを設置して、一年を通じて快適な空間になりました。
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洗面から浴室
洗面から浴室
リフォームの目的の一つが、昭和中期を思わせた水回りの改善です。
通路や男女それぞれのトイレを統合してスペースを広げ、断熱・気密・空調を強化。
ガラス引き戸のユニットバスは洗面脱衣室を光で満たし、空間全体を広々と明るく見せます。
水回りの豊かさは家の豊かさと心地よさの印象を作ります。
設計監理 | 一級建築士事務所アーキシップス京都 | |
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施 工 | 沼田工務店 | |
構造工法 | 木造軸組/べた基礎 | |
敷地面積 | 不明 | |
建築面積 | 約100㎡ | |
延べ面積 | 約100㎡ | |
摘 要 | リフォーム瑕疵保険 | |
断熱性能 | 柱間充填断熱 | |
工事記録 | hiroba 現場日記 |
屋根仕上 | 瓦屋根/一部ガルバリウム平葺き:リフォーム工事対象外 | |
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外壁仕上 | 杉板/キシラデコール塗装 モルタル下地/弾性リシン吹き付け |
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内部仕上 | 床 | フローリング オスモフローリング |
壁・天井 | 珪藻土 エコクイーン | |
造作家具 | 0556style | |
換気空調設備 | パナソニック空質空調社 | |
衛生機器/ユニットバス | TOTO | |
給湯 | エコジョーズ |