京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column01 決定版!寒くない家作り 2017.02.27
・寒くない家作りは「断熱」「換気」「暖房」がポイント
・断熱はダブルバリア、換気は換気システム、暖房は全館空調
・どう組み合わせるかは住む人の実情に合わせて
日差しの色が温かみを帯びて、春の兆しを感じるこの頃。
冬の名残りに、寒くない家について考えます。
住宅のご相談で一番切実なのが、「寒いのはイヤなんです!」というご相談。
この季節、弊社のお施主様は真冬を暖かく過ごされたかなあ、と思いをはせます。
さて、冬を暖かく過ごせる家作りのポイントは3つ。
第一は、外気温が下がっても室内温度が影響されない高い断熱能力。
第二は室内の暖まった空気が外に逃げないように防御する換気システム。
そして最後が暖房能力です。
断熱と言っても天井・床・外壁・窓などアイテムは多岐にわたり、換気、暖房のいずれにも多くの商品や技術・選択肢があり、それぞれに長所も短所もあります。
また木造と鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、構造によっても最適解は異なります。
設計事務所といえどすべてを経験し知り尽くしているわけではありませんが、これまでの経験から木造住宅に最も効果があった「わたしの一押し」をご紹介します。
1 断熱
外壁と屋根の断熱は、ダブルバリアが最も高い効果を示しました。
柱間への吹き付け断熱と、その外側に断熱材を張りつけるダブルバリア。
基礎断熱と樹脂サッシを組み合わせて、最高レベルの断熱性能が完成しました。
2 換気システム
換気は家の寿命を変える可能性さえある、木造住宅の重要な設備です。
ところが冬季には、暖房で温められた空気を排出し冷たい外気を取り込むことで、暖房効率を下げることがあります。
換気システムなら、熱交換器付の換気ユニットで空調効果を損ねずに換気することが可能になります。
3 暖房
暖房設備のイチオシは、実は暖房ではなく、全館空調システムです。
上記の換気システムに空調機能をプラスしたシステムが開発され、温度調整された空気を各室に供給して換気と空調を一挙に解決する、と言う考え方。
天井フトコロが広くなる、階高や軒高の制約が生まれる、シーリングファンや連動型のレンジフードなどコストアップしやすい、フィルター掃除の手間がかかる・・・など誰にでもお勧めできるものではありません。
ただ暖房に限れば、これまでのところこれが一番高い効果を示した、と言えます。
簡単に住宅の暖房設備をご紹介します。
・ヒートポンプ式の壁掛けエアコン
もっともポピュラーな空調で、いわゆるエアコンです。
調湿効果や清掃機能など品質の高さと省エネ性能に優れます。
暖気が上昇しやすく風の音と流れが明白です。
・薪ストーブ
炎の暖かさだけでなく火の癒し効果、自然に家族が集まる演出効果が抜群。
ただ炎は水蒸気を排出するので、高気密高断熱の住宅では必ず換気とセットで使用する必要があります。
設置コスト、ランニングコストともに高めで、煙突そうじ、薪割りなど使い続けるには相応の覚悟がいりそうです。
・バイオエタノール暖炉
最近話題のバイオエタノール燃料を使うエコスマートは、薪ストーブの問題点をクリアした新しい暖炉です。
設置コストが高く、暖房器具ではなく演出器具という位置付けです。
デザイン性の高さも大きな魅力ですが、暖房かインテリア雑貨か、熟慮を求められます。
・蓄熱暖房機や床下暖房
深夜電力で蓄熱層を温めて放熱する暖房設備で、輻射熱の自然な暖かさが大変快適です。
水蒸気やCO2を排出しないクリーンな暖房として、環境面でも優れた特質があります。
一方で深夜電力料金の割引率が低下し、ランニングコストは上昇中です。
いずれも一長一短があり、単純にこれが一番とは決められません。
最高の断熱、最高の換気と暖房を組み合わせると、コストアップも必至。
断熱・換気・暖房はそれだけで考えるより、家全体の予算や家を建てる目的を総合的に判断して、住む人に最適なバランスを見つけたいものです。