京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column37 熱烈!断熱塾 命を守る家づくり 2020.03.25
■お風呂がコワイ
新型コロナウィルスの話題で持ちきりです。毎日「新たな感染者が出ました。」と発表する地方自治体の知事や市長の顔を見ると、身に迫る脅威を感じます。
現在、厚生労働省の発表によると、国内感染の死者数は43人(3月24日公表分)との状況です。
本年1月14日、一例目として神奈川県で中国武漢に滞在歴のある30代男性の新型コロナウィルス肺炎患者が報告されて、そろそろ2ヶ月。
事態は、
「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないか。」 「感染者数は、当面、増加傾向が続くと予想される。また、すべての感染状況が見えているわけではないので、依然として警戒を緩めることはできない。」
との専門家会議の見解(3月9日)通りに推移して、懸念された爆発的な感染には至っていない、と思われます。
時に平常心をなくしそうになりますが、新型コロナウィルス感染の特徴として
・高齢者・基礎疾患保有者における肺炎の合併症が生命を脅かす
・感染しても発症しない場合がある
・発症しても多くの場合は発熱や咳などの軽症
・感染しても80%の人は、他人に感染させない
と報告されていることから、高齢者ではなく、糖尿病や高血圧症、心臓病などの基礎疾患もない健康な成人は、
・自分で健康管理、体調が優れないときは体温測定
・人が多く集まる室内での集会等に参加しない
・密閉空間での密集環境かつ密接状態を、絶対に避ける
・会社、学校、自宅に着いたら、手洗いをしっかり行う
感染から身を守り、感染を無自覚に広めない、これら個人でできる不断の努力をオールジャパンで続ければ、困難を克服する日が来ると信じます。命を守る行動という点では、家の断熱性能を高めることも同じように重要です。
東京都では、入浴中の死亡者数の推移というデータが公表されています。
「入浴中」の定義は脱衣から湯船までの入浴行為全般を指しますが、それによると入浴中の死亡者数は直近3年の真冬の3ヶ月で、平成30年が673人(1〜3月計、以下同じ)、平成29年は570人、平成28年は577人。
全国ではなく東京都だけの、1年ではなく3ヶ月だけの数字です。
死者数の多さに驚きますが、これはいわゆるヒートショックによる脳卒中や心筋梗塞が原因と言われます。
温度差の大きい場所を行き来して起こる血圧の乱高下が原因で心臓や脳の血管に負担をかけ、死に至る発作を引き起こすことがあるのです。
家全体の断熱性能を高めて、屋内に温度差を作らないことが、効果の高い危険回避行動になります。
寒冷地域より温暖な地域の方が、ヒートショックによる死亡率が高い、との説もあります。 温暖な地域では断熱を軽視してきた背景があり、断熱能力の低い家が多いのでは、と疑われるのです。
高齢者や基礎疾患がある人、あるいはその両方が重なると、ヒートショックによる危険がより高まるのは、新型肺炎と同様です。
不安を煽る報道に気を取られがちですが、身近にある危険にフォーカスして、具体的な対策をとることで、脅威をひとつづつ遠ざけることはできます。
死者数や死亡率をデータとして取り上げるとき、人の命を数字に置き換える冷たさに抵抗感を感じることがあります。
致死率が0.001%でも、一人の死は、本人にも家族にも100%の死です。
ただマクロ的傾向を把握して事故原因を具体的な事象として捉えることが、次の事故の予防には有効と考えます。
断熱性能が高ければ失われずに済んだかも知れない命があることを、忘れないようにしたいと思います。