京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column06 空調を考える 2017.05.08
・熱は高い方から低い方に移動する
・熱の移動は3種類、対流.伝導、輻射
・春のような暖かさを実現する輻射式がオススメ
寒さを感じない、暖かい家にするポイントは、断熱、気密、適切な暖房。
ところで、「寒くない」とはどういう状態でしょうか。
寒くないとは、体温を奪われないこと。
周囲を構成する物質の温度が低いと、人体から体温が奪われて寒く感じます。
真夏に地下室や鍾乳洞に入るとひんやりする、あの現象です。
真冬の建物は外気温の影響で、室内の床・壁・天井まで温度が低下することで、寒く感じやすくなるのです。
年間を通した心地よい室内環境を作るには、外気温に左右されにくい断熱と気密が重要と言われる所以です。
ところで、熱は温度の高い方から低い方に移動する、と言われます。
熱移動は、対流、伝導、輻射(放射)の3種類。
日本の住宅で最もポピュラーなルームエアコンは、空気を温める対流式です。
メーカー各社の努力で省エネ、自動清掃、タイマー運転、機種によっては加湿など、高機能製品が揃います。ただ、乾燥や足元との温度差、風切音が気になる場合もあります。
エアコンと24時間換気を融合することで新しい快適性能を実現したのが、全館空調です。
年間を通して温度調整済みの空気を各部屋に供給することで建物温度を一定に保ち、対流式でありながら輻射効果も併せ持ちます。
大変快適でオススメですが、コストや空間など実現が難しケースもあります。
熱移動の続きをお話ししましょう。
物質から物質へ移動する熱は、輻射熱と言います。
この輻射熱を利用した暖房が、蓄熱暖房や温水式やオイル式のパネルヒーターで、最近では輻射(放射)式の冷暖房システムも浸透してきました。
輻射熱を利用した暖房は、人体に直接到達して体感温度を得る効果と、床・壁・天井を温めてその二次輻射により体感温度を高める効果があります。
格子状のサーモエレメントを室内に設置する方法と、土間や基礎下の土中など建物下部を温める方法があります。
輻射式の暖房システムは「春のような暖かさ」と謳われていることが多いのですが、エアコンの乾燥や風切音がなく、温度の室内高低差も感じられず、建物の中にいると冬であることを忘れる自然な暖かさを実現します。
弊社では長らく、蓄熱暖房機と床下暖房をエアコンと組み合わせた冷暖房システムを構成してきました。
高気密高断熱の住宅では、水蒸気を発生しない輻射熱を利用した暖房が欠かせないからです。
大変心地いいシステムですが、深夜電力の新規契約がストップしたいま、同様の快適さでコストパフォーマンスにも優れたシステムを検討しています。
空調と換気両方の機能を兼ね備える全館空調、サーマスラブ、温水で蓄熱層を形成するヒートコア、格子状のサーモエレメントで冷暖房できる輻射式の冷暖房システムなど、ランニングコストにも優れた商品が多数あります。
断熱気密効果や敷地の環境特性、予算まで総合的に検討して、最適な室内環境を追求しています。