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column111 全館空調と日射遮蔽 2023.09.21

断熱、気密、熱交換型換気

弊社自邸「竹林風洞」の全館空調効果を紹介しています。

「竹林風洞」は全館空調の意図のないまま、約18年前当時の高気密高断熱を目指した結果、壁掛けエアコンの全館空調効果を実現していました。
効果を得る前提は床・壁・天井の高断熱性能、窓など開口部の高気密性能。
そして熱交換型の換気設備です。
高断熱・高気密・熱交換型換気扇が揃えば、全館空調効果を得る準備が整います。

壁掛けエアコンの全館空調効果を高めるポイントは、あと2つ。
一つは屋内空気の流れの確保。
温度調整済み空気の大動脈となる住宅中央部の吹き抜け、単位空間への通り道となる少ない仕切りやドア下のスリットを指します。
もう一つ大きなポイントが、屋内への日射流入を避ける工夫です。

熱は窓から侵入する

散々言われることですが、夏の室温を上げる最大の原因は窓からの熱の侵入です。
暑さの70%以上が窓から入ると言われます。
夏の暑さはじっくり暖められた地面と大気、そして降り注ぐ太陽光で構成されます。

その太陽光には大空に拡散される天空日射と、一直線に届く直達日射があります。
つまり夏の太陽光による温度上昇を抑えるには、全天の天空日射と、時間帯によって変わる東西面の直達日射の、両方に対応する必要があります。

窓からの熱=太陽光の侵入を防止する方法は二つ。
天空日射量に対抗できる高機能窓、窓の遮熱性能です。
もう一つが、東西面の直達日射量を遮る平面プランです。

竹林風洞の場合

断熱等性能等級4程度の竹林風洞の、壁掛けエアコンの全館空調効果。
そのポイントは窓の取り方にあります。

夏の強烈な直達日射量が多い東西面にほぼ窓がなく、朝陽も西陽も入りません。
南北の背の高い掃き出し窓には外部に庇を設置、庇と庭園部の樹木を通して弱まった光だけが、室内に届きます。
南北の窓にはブラインドを設置して光と熱の侵入をカット。
光量の調整が容易なブラインドで明るさを確保し、熱は排除します。

竹林風洞の設計を開始した当時は、高気密高断熱だけを意識しました。
屋根、壁、床の断熱性能を高めて、窓の気密性能を上げる。
屋内の活発な空気の流通のために吹き抜けを取り入れ、仕切りのない、家全体が大きな一部屋になるようなプランとする。
これら高気密高断熱住宅の基本に忠実に計画した結果、エアコンの効果を最大限にし、全館空調効果となるようです。

到達地点は365日快適な家

全館空調は、家のどこでも、365日快適な室内環境を作るための手段です。
6月から9月まで4ヶ月の除湿と冷房、11月から3月まで5ヶ月間の暖房、日本の住宅では12ヶ月のうちの9ヶ月間空調が稼働しています。
住宅は空調効果が最大限になるよう計画されるべきです。

一方で大気が安定する残りの3ヶ月は、開け放した窓から爽やかな風が入り、温帯に位置する国の快適さを十分に享受できます。
空調も、風通しも、光の確保も、同じように大切にしたい。

家のあるべき設備を考えると空調の重要性に気づきます。
空調を考えると、間取りの制約なしに365日家中どの場所も快適な、ダクト方式の全館空調に行き着きます。

→column112 ダクト方式の全館空調 2023.10.04

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

断熱、気密、換気、空気の流通、日射遮蔽
庇や植栽で外部からの日射を遮蔽できる
暑さも寒さも窓からやってくる
庇や植栽で日射遮蔽するプラン
全館空調の前提の一つ、窓内外の日射遮蔽
空調利用の長い日本、空調しない時期も快適に
  1. 110全館空調効果@竹林風洞
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