京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column104 地震に備える家づくり 2023.06.30
地震は今も発生中
日本は地震大国と言われるけど、地震てそんなに起こってる?素朴な疑問で国立研究開発法人防災科学技術研究所のサイトを覗いてみました。
リアルタイムで発生場所を表示する強震モニターによると、驚くことに、いまこの瞬間も日本のどこかが揺れています。
我が家を地震被害から守るために、建築主は何ができるでしょうか。
木造住宅の地震被害に直結するのは、土地と建物双方の揺れやすさの関係です。
地震発生時にこの2点の関連が薄ければ、敷地に極端な地盤変状が起こらない限り、被災後も建物は住める状態に保てるはず。
岩盤にも土地にも建物にも、固有の揺れやすさがある
土地の揺れやすさとはどのようなものでしょうか。地盤は深いほど沈殿し締め固めが進むので、深い岩盤層は固く、浅い堆積層は軟らかい、そんな傾向があります。
水辺の近く、河川湖沼の周囲、谷筋の表層は特に軟らかく、上に盛り土で作られた街は地震被害を受けやすい場所と言えます。
地震波は、揺れの強さや長さ、周期、揺れ方の特性、発生場所からの距離、地下構造、そして表層地盤の影響を受けて、複雑に増幅されます。
一方で建物には、構造や階数、配置などで変化する固有の揺れ周期があります。
仕上げや築年数、被災経験、被災中にも変化すると言われ、一般に高層ビルは数秒から十数秒を超える長周期、住宅など小さい建物は1秒から2秒の短周期とされます。
揺れの周期と建物周期がシンクロするとき
地震の揺れに建物固有の周期に近い周期が含まれて共振しやすいとき、揺れが増幅して、建物に大きな影響が出ることがわかっています。熊本地震や能登半島地震など住宅倒壊が多く発生した地震では、軟弱な表層地盤が揺れを増幅させ、木造住宅の固有周期に近い短周期の揺れが建物と共振して、被害が飛躍的に拡大したと言われます。
そのため倒壊を招く短周期を、キラーパルスと呼ぶこともあります。
一方、巨大地震は遠くまで到達する長周期の揺れとなりやすいため、東北の震災では首都圏や関西圏の高層ビルでも被害が出る原因となりました。
地震に備える家づくり
とは言え、地震の起こる場所も態様もすべて違うように、倒壊被害を招くメカニズムもいつも異なります。短周期の揺れに共振しやすい木造住宅ですが、0.5秒の周期で倒壊が増えることも、1.5秒の周期で倒壊が増えることもあります。
現実の災害は常に違う様相を見せるので、「この周期の建物にすれば安心!」と割り切ることも困難です。
建築主が地震発生に備えるには、軟弱地盤には地盤改良を、木造住宅は初期段階から変形しにくい耐震等級3にする、この基本が最良の備えになります。
地震による破損を最小化する家を、実現しましょう。
資料:特記以外文部科学省「地震がわかる」より転載、加筆