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column103 耐震等級3の効果 2023.06.21
2000年(現行)基準と耐震等級3
2016年の熊本地震報告書(国土交通省)から、住宅倒壊の防止を考えます。20万棟が被災した熊本地震ですが、地震被害が集中した益城町周辺でも、品確法に定める耐震等級3の住宅は全棟が無傷でした。
耐震等級3は、建築基準法の2000年基準と何が違うのでしょうか。
住む人の生命と財産を災害から守るために、住宅には構造躯体が損傷したり倒壊したりしない強度が求められます。
建築基準法では「まれに発生する地震に対して損傷しない」性能、つまり震度5程度の地震にも大規模改修せずに継続使用できる性能が要求されます。
そして震度6以上の地震「ごくまれに発生する地震に対して」は「倒壊・崩壊しない」、人命が守られる性能を要求します。
建築基準法改定のたびに強化され、現行基準は2000年基準です。
しかし建築基準法は最低限を示すガイドラインなので、建築主の選択でより高い強度を求めることができます。
そのお墨付きが品確法の住宅性能表示で、耐震性能の最上位が耐震等級3です。
倒壊ゼロの耐震等級3
品確法の正式名称は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、質の高い住宅の普及を目的に2000(平成12)年に施行された法律です。建築基準法の2000年(現行)基準は、住宅性能表示制度では等級1にあたります。
等級2は等級1の1.25倍、等級3は1.5倍の力に対して損傷を生じない強さ、が要求されます。
建物の強化とは、具体的には基礎の配筋間隔は短く、鉄筋径は太く、耐力壁の強度と量が増え、面剛性も強固に・・・より強い部材を多く密に使用して実現します。
軸組は木の部材の組み合わせで、本質的に連続する揺れに弱い性質があります。
揺れの繰り返しで接合部が緩み、そこに上階の重みがかかって上階の重みで接合部が崩壊、倒壊に至ります。
耐震等級3は接合部や耐力壁、剛性の強化で地震の初期段階から揺れを最小限に止め、建物の変形・倒壊を防止します。
熊本地震で倒壊がなかったことで、耐震等級3の有効性が際立ちました。
軟弱地盤への対応は
耐震等級3は地震の揺れから建物を防御するための仕組みです。では軟弱地盤の地震力増幅から木造住宅を守るにはどうしたらいいのでしょうか。
地盤は深いほど古く堆積して固く、浅いほど柔らかい構造をしています。
地震波は深く固い地層から柔らかい地層に伝わると揺れが増幅され、柔らかい台地や沖積低地の揺れは大きくなります。
軟弱地盤の地表は地下深くの岩盤とに比べて、数倍の揺れになると言われます。
宅地開発が進み、一般に流通する住宅用地でも軟弱地盤は珍しくありません。
建物の不同沈下を招く軟弱地盤ですが、大地震に際しては敷地が大きく変状したり、地震力の増幅で建物に甚大な被害をもたらすことが知られています。
工事前の地盤調査で発覚することもありますが、必要な地盤改良工事をすることで、危険を低減することができます。
敷地が軟弱地盤にある住宅でも地盤改良で上からの荷重に対抗し、高い耐震等級で横方向の荷重に対抗して、より安心できる住宅を作ることができます。
*写真1 国立研究開発法人建築研究所 北海道胆振東部地震報告書より転載