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column101 耐震性能2000年基準の有効性 2023.06.07
耐震性能 2000年(現行)基準 〉新耐震基準 〉 旧耐震基準
日本は地震大国、震度1以上の地震は毎日のように発生しています。2016年に発生した熊本地震の報告書から、地震による住宅倒壊を考えます。
前章では被害が集中した熊本県益城町周辺で行われた調査から、「旧耐震基準」の古い木造住宅に被害が集中している点と、その理由について取り上げました。
一方で現在の建築基準法に適合する「2000年(現行)基準」は94%以上が無被害か軽微な損傷にとどまり(グラフ1)、現行基準の有効性が際立ちました。
築浅木造住宅の倒壊 筋交い金物の有効性
熊本地震で倒壊した木造住宅の中には、少数ですが比較的築年数の浅い「新耐震基準」の家も、「2000年(現行)基準」の家もありました。報告書ではこれらの倒壊した建物のうち、調査できた77棟を分析、被害要因として次の4点を挙げています。
・現行規定の仕様となっていない接合部 73棟
・著しい地盤変状の影響 2棟
・蟻害 2棟
・隣接建物の衝突による影響 1棟
77棟のうち73棟(94%)の倒壊原因が「現行規定の仕様となっていない接合部」とされます(グラフ2)。
意味は「耐力壁を構成する筋交い端部に金物での固定がなかった(写真1 国土交通省熊本地震報告書より転載)」。
建築物は重力や建物荷重など上からの力と、風や揺れなど横からの力を受けます。
木造軸組は、垂直の力を受ける柱と力を水平に分散する梁、歪みを防ぐ火打張り、筋交いや構造用合板で柱間を補強した面=耐力壁、で立方体を構成します。
この耐力壁=横方向の力に対する抵抗力を備えた壁量の基準は、1982(昭和56)年施行の「新耐震基準」で強化されました。
阪神大震災を教訓に改定された「2000年(現行)基準」では「新耐震基準」に加えて、「基礎形状」「柱頭、柱脚、筋交いの接合方法」「耐力壁をバランス計算して配置すること」が義務付けられました。
この「柱頭、柱脚、筋交いの接合方法」は「専用の金物で固定すること」を意味しますが、報告書では倒壊した73棟は「新耐震基準」=金物固定が規定されない時代の建物だったため、耐力壁が十分でなかった点を指摘します。
「新耐震基準」以後でも「2000年(現行)基準」以前の建物に倒壊があったことは、図らずも現行基準の有効性を示す例となりました。
耐震性能2000年基準の有効性
「地震による木造住宅の倒壊を防ぐには」この問いに対して有効な回答はひとまず、「2000年(現行)基準に適合する耐震性能の確保」です。2000年以後の木造住宅にお住まいなら、ご自宅は適合しています。
2000年以前、特に1981(昭和56)年以前の古い木造住宅にお住いの方には、耐震診断を受けてご自宅の耐震性能を把握し、必要な耐震改修をお勧めします。
また、法改正後の2000年(現行)基準の建物で倒壊した建物は7棟ありますが、このうち3棟にも同じ原因が見られました。
法制後の不適合は、施工不良の可能性が疑われます。
築浅住宅の倒壊 地盤の著しい変状、軟弱地盤
ここまで見てきて気になるのは、「2000年(現行)基準」適合にもかかわらず倒壊に至った、比較的築年数の浅い木造住宅です。被災20万棟のうちのわずか数棟ではありますが、現行法で対処できない地震被害があったことは否定できません。
施工不良のない現行基準適合の木造住宅は、どのような原因で倒壊したのか。
木造住宅全般に普遍化できる教訓はあるのか。
次回に続きます。