京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column96 住宅省エネ急加速 2023.02.15
帳尻合わせが始まった
ZEH水準とか太陽光発電義務化とか、2030年適合義務化とか。住宅省エネ施策が次々と打ち出された2022年。
なんだか急に、騒がしくなったたように感じます。
その背景はもちろん、「カーボンニュートラル2050」。
2050年までに脱炭素社会を実現する国の約束は、産業、運輸、エネルギー転換、そして建築・住宅の4部門の計画からなります。
工作機械の高効率化、EVトラックや省エネ車両の導入など、他部門での脱炭素化計画は着実に実行されています。
建築・住宅部門においても、新築ビルの省エネ義務化付などの進展があります。
しかし規制しやすい企業対象の建築部門と違い、個人所有で築年数のばらつきが大きい住宅部門は、省エネ化の停滞が顕著です。
現行基準適合は既存住宅の10%に留まるため、今後、帳尻合わせの性急な転換が求められるのです。
2030年本格始動
1970年代まで、日本の住宅には省エネ基準がありませんでした。1980年に省エネ法が施行し、住宅の省エネ基準が建築主や施工者へのガイドラインとして告示されました。
改定が続き最新は2016年の「H28基準」、断熱等性能等級4相当と一次エネルギー消費等級4の両方が求められます。
1999年の「品確法」制定で、住宅の性能を等級評価できるようになりました。
その認定基準の一つが断熱等性能等級で、2009年から始まった長期優良住宅制度では等級4が認定の要件になりました。
一方で認定を受けない住宅の省エネ性能義務は、今もありません。
世界的な潮流に押されて住宅省エネ化は必至、でもその前に周知から、と建築主への説明義務化が始まったのが2021(令和3)年。
住宅の省エネ化そのものは、2年後の2025(令和7)年に義務化されます。
ただしそのレベルは20年以上前に作られた平成11年基準(断熱等性能等級4相当)にとどまります。
高気密高断熱住宅と呼べる断熱等性能等級5が新築住宅で義務化されるのは2030年、そこから日本の住宅省エネ化が本格的に始動します。
消費者意識は進んでる
日本の住宅行政は、耐震性能やシックハウス対策の24時間換気など多くの問題に取り組んできました。しかし省エネが世界的な関心事となっても監督省庁が不確定なまま、住宅省エネ化は徐行運転に終始しました。
住宅市場動向調査によると、注文住宅の建築主が設備面で住宅の選択理由に挙げたのは「高気密高断熱だったから」がトップ。
面積や間取りを抑えて5年連続、10年平均でもトップでした。
注文住宅を建てる人の数は総人口から見ると圧倒的な少数ですが、その層の住宅省エネに対する関心は以前から高いものがありました。
高度な省エネ住宅、そして義務化を受容する余地は、十分にあったと思われます。
住宅省エネ化は政治や行政よりも、先進的な提言をする有識者と、関心を深める建築主が主導してきた歴史があります。
建築主に質の高い住宅を求める気持ちがあれば、応える知恵も技術も製品も、すでに市場には揃っています。