京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column87 ロシアン・ウッドショック 2022.04.22
ウッドショック×戦争
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行以降、住宅業界は激震の連続です。昨春から始まった、木材価格が高騰するウッドショック。
その影響下で木材価格が高止まりする中、今度は戦争の影響による第二のウッドショックが懸念されています。
北米の需要亢進から始まったウッドショックの影響は鮮明です。
農林水産省の木材価格統計で、杉材の価格を比較しました(グラフ1)。
昨年3月以前の1年間と以後の1年間では、昨春に平均単価が2倍になったまま、高値圏に張り付いています。
今年は年初に下落の兆しが見えましたが、2月に下げ止まり。
以後のデータはまだですが、これ以上の値上がりが確実な情勢です。
その理由が第二次ウッドショック、戦争によるロシア産木材の輸入制限です。
ウクライナ侵攻に対して、欧米諸国は戦争の資金源を断つべく、資源国ロシアの石油や天然ガスなどの輸入削減に踏み切りました。
侵略戦争を許容しない意思を明確にする日本も、欧米と足並みを揃えて経済制裁に同調し、ロシアからの資源輸入を大きく削減しています。
また侵攻国ロシアの木材は「紛争木材」と考えられるため、輸入が新たなリスクになりかねない点も、影響を及ぼしているようです。
木材輸入の実態は?
日本の住宅建築は、輸入木材に依存しています。高度成長期以降の住宅産業の拡大で、木材需要も急伸。
安価で安定的に供給される輸入木材は、様々な形で住宅に使われています。
国別の木材輸入額を見ると、2022年度実績でロシアのシェアは6%程度(グラフ2)。
ロシア産がゼロになっても、他国からの輸入を増やせばカバーできそうですが、そう簡単にもいかないようです。
輸入木材の種類は「丸太」「製材」「集成材」「合板」に大別されます。
総輸入量のうち50%を占める製材で、ロシアのシェアは18%。
同じく11%の集成材では、ロシアのシェアは8%(グラフ3)。
需要の大きい製材と集成材でロシアの存在感は大きいようです。
また昨春に始まったウッドショックでは、北米やEUからの輸入総量が減少した部分をロシア産がカバーした実績があります。
代替商材までも欠落しかねない、その危機感が大きいようです。
住宅業界では早速、大手メーカーや商社による買占めの噂も、ウッドショックの時と同様に囁かれ始めました。
円安効果
ウッドショック後の高止まりとロシアン・ウッドショックのダブルパンチで不安定化している木材価格に、追い打ちをかけるのが3月以降の急速な円安です。国産材の供給量は急増せず、総輸入量は減少、市場の混乱は継続、通貨は下落。
値上がりしない理由が、見当たりません。
アフターコロナへのシフト、戦争後の世界、金融政策の方向性。
これらマクロの課題に、個人の家づくりも影響を受けます。
一刻も早く元の世界に戻ることを、願うばかりです。