京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto

column86 新築を取り戻せ 2022.04.15

コロナ → リフォーム

新型コロナウィルスの感染拡大が始まって、2年以上。
外出制限が緩和されても、人ごみの多い場所に行く機会はなるべく減らす。
展示会や打ち合わせは可能ならオンラインに振り替え。
そんな日々が続いた結果、家で過ごす時間が増えました。
その影響でしょうか、住宅リフォーム市場が活気付いています。
家に関心が集まり、よりよくしたいと考える人が増えているのか・・・。

などと考えていたら、自邸の外壁に汚れが目立つことに気づきました。
自邸「竹林風洞」は築15年。
建築家目線で見直すと、外部の木部は保護剤が薄れ、白木の格子にはアクが。
屋内の汚れは日々の生活でメンテナンスできますが、外壁などいわゆる外皮は建築家と言えど自力だけでメンテナンスするのは困難です。
早速、竣工当時の美しさ取り戻すを計画を立てました。
思えば築年数が経った作品での外壁メンテナンスは、毎年発生する業務。
自邸について考えもしなかったとは、まさに紺屋の白袴でした。

工事の計画

家全体をチェックして、どんな工事が必要か検討しました。
汚れが目立ってきた左官仕上げの外壁は元のコテ味を生かす塗装仕上げとし、薄くなった木部の保護剤は再塗装。
白木のアクは洗浄の上、透明な保護剤で白木の美しさを取り戻します。
乾燥が進んで隙間が空いてきたFIX窓は、コーキングを打ち直し。
庭では成長した樹木を根切りして少し小さくし、排水促進の地盤改良も。
ついでに、屋内すべての換気扇の清掃とフィルター交換も依頼しました。

今後は毎年、少しづつ有料メンテナンスをすべく、方法や順番を検討中。
住宅設備も電化製品同様に新しいほど高機能な上に省エネ性能が高いので、コストをかけてもアップグレードする価値はありそうです。

暮らしであり、財産であり

長期優良住宅という制度があります。
住宅ローン金利が一般と比較して低かったり、税制の優遇が受けられたり。
新築時のメリットに惹かれて選択する建築主の多い制度ですが、目的は、日本国内に長期保有に耐えられる優良な住宅を増やすこと。
そのため設計時には長期保有を前提とした頑健な構造や、省エネ性の高い断熱性能、メンテナンス性の良さなど、様々な条件が求められます。

住宅販売の現場では安く販売することを目的に、できるだけ安い材料を使って工期を短く、コストをかけずに建築することが一般化しています。
そのため、長期優良住宅の審査に適合する計画は、工事費が割高に感じられます。
またこの制度では、竣工後一定期間が経過すると建物をチェックして、問題があればメンテナンスし、その記録を保存する義務もあります。
優良な住宅を取得し、メンテナンスの継続で価値を永らえる。
一般的な商品化住宅と比べるとコストも手間もかかる制度ですが、慎重に作って大切に守るその考え方は、住宅のあるべき姿でもあります。

住宅の質は生活の質の高さです。
また、住宅という資産の価値でもあります。
価値を永続するための努力は、積極的な資産保全にほかなりません。

→column87 ロシアン・ウッドショック 2022.04.22

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

木質保護剤が薄くなってきた
左:白木 右:白木+アク
足場を組んでコーキングの補修
竣工当時の竹林風洞
庭もリニューアル予定
  1. 85住宅の省エネ化
  2. 84第3種換気vsコロナ
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  8. 78住宅費用の上昇要因
  9. 77注文住宅の理由
  10. 76注文住宅と言う選択
  11. 75令和の時代の注文住宅
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