京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column80 令和の時代の家づくり 家は動線で作る 2021.11.29
仕事に子育てに、多忙なご夫妻の場合
注文住宅ならではの家の質を実感できるのは、地味ながら重要なポイント、家族の生活を考慮した動線です。住みやすく快適な家は敷地の使い方と動線、特に家事動線で作ると言っても過言ではないのです。
例えばこちらの物件は、仕事に子育てに、多忙なご夫妻の家。
買い物に行く時間はゼロ、食品や日用品はすべて宅配です。
朝は子供の世話と持ち物の用意、夕方はお迎え、洗濯、宅配の収納、料理、食事、片付け、寝かしつけ・・・と、座る暇もない忙しさ。
宅配が玄関前にあふれたり、洗濯物が乾かなかったり、出発前に子供に持たせるモノが見つからなかったり・・・と、毎日ストレスがいっぱいでした。
そこで一番忙しい夕方、家族が夕食のテーブルに着くまでの間に、つまり玄関から食卓までの間に、洗濯、収納、料理がすべて片付く動線を提案しました。
帰宅時、玄関横の洗面脱衣室に直行、洗濯機と乾燥機で洗濯物を処理、その先のストッカーに宅配を整理、その先のキッチンで料理。
パートナーは子供を連れてリビングに直行、共に時間を過ごします。
キッチンの先のダイニングテーブルで揃って食事を楽しめる動線は、ご家族をストレスから解放しました。
極端なライフスタイルに見えるでしょうか。
仕事と子育てを両立するカップルは、こんな奮闘の日を過ごしています。
設計で子育ての時間が豊かになっていたら、とても嬉しく思います。
介護と住宅の安全保障
別の物件では年配のご夫妻のために、身体の自由がきかなくなった時の生活を考慮したプランとしました。フラットな室内、タッチレスのスイッチや水栓、介助しやすい通路幅の確保。
車椅子で周回できるよう、アイランドキッチンを備えます。
2階の寝室に行けなくなる時のことを考えて、1階リビングは照度を落として計画。
家事動線と寝室がひとつながりになって、介護体制が整います。
また冷暖房と換気を全館空調にすることで、エアコンや換気扇のオンオフ、リモコン操作の手間もなくなりました。
室内を最適環境に整える空調は、動線を一つ消すことにつながります。
身体が不自由になる事態は、年齢に関係なく誰の身にも起こり得ること。
介助を視野に入れた家事動線の検討は、家庭内の安全保障でもあります。
快適な家は、生活動線でできた家
アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、「デザインは見た目ではなく、どう機能するか。」を常に問いかけたと言います。家族の動きを知り、家事動線をデザインした家は、いつまでもそこにいたい、家族にとって一番快適な場所になります。
家は家族の生活の、永続的なプラットフォームであって欲しい。
最適な家事動線を見つけて、ストレスのない毎日と、楽しくて豊かな家時間に出会いましょう。