京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column72 ウッドショックの現在 2021.07.30
木材費は2倍
住宅業界では春先から噂され、5月にはテレビや新聞報道で全国レベルのニュースとなったウッドショック。先ごろ実際の見積を手にして、その数字に驚きました。
当初の噂では米松(アメリカ産の松)の横架材(梁)が入手しにくい・・・というような漠然とした話でした。
地球規模のサプライチェーンに支えられてきた建築材料や住宅設備機器なので、様々な理由で何かしらの不足が伝えられることは、これまでにもありました。
・港湾組合のストで出荷できない(北米)・・・
・原産国側で突然輸出禁止に(アジア)・・・
・長期の夏休み・クリスマス休暇で業務停止中(北欧)・・・
・大規模災害の影響で工場も流通もストップ(日本)・・・
ですが、木造住宅の木材が払底するという事態は、初めてのケースでした。
過去の建材不足は数カ月程度で収束することが多かったので、今回の見積に際して、そろそろ落ち着いてきたかと期待したのですが。
進行中の物件で、4月と7月の2回、同じ工務店に見積を依頼しました。
同じ物件で構造や面積に、見積に関わる変更はありません。
4月の構造材の見積は、¥1,930,000。
7月は¥3,860,000。
文字どおりの2倍・・・構造歳以外の材木もにたような動き。
驚きで、しばらくは声も出ません。
これがウッドショックか。
多くの部材で構成される構造なので、横架材が高騰しても他は大丈夫だろうというような期待は粉砕されました。
旧知の材木屋さんに聞いてみると、
・一時のような”木材がまるでない”状況は脱し、商品供給は回復傾向
・ヒノキが4倍、国産も取り合いなど、高騰が継続している
・構造材に歩調を合わせて、他の木材も値上がり
・プレカットの予約受付は建築確認済、契約済が条件
通常の物件ではスムースな着工のために、図面が完成した時点で工程を出して工場予約まですることがよくあります。
現在のようにプレカットの予約が見積もりや建築確認まですべての完了後になって、しかも工場の稼働率が低いと、着工までに必要な時間が数カ月は長引きます。
プロジェクト予算だけでなく、竣工までのスケジュールも数カ月長引きそうです。
建築は地方色の強い業種なので、物件のある地方や工務店、プレカット工場などによって様相は違うと思います。
一部のハウスメーカーなどによる買占めまがいの在庫確保には、国からストップがかかりました。
これは1軒の見積で、市場の動向は定量的に俯瞰すべき、と理解しています。
ただ伝えられる内容からは、この傾向は全国共通のようです。
金属不足などほかの材料も価格上昇が伝えられる中、木材市場は以前の姿に戻るのか、先が見えない状況が続きます。
→column73 ウッドショック後の世界 2021.08.12
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。
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輸入品高騰の影響はほかにも
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構造材見積 4月と7月で2倍の開き
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木造は木の集合体
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回復を祈るばかり