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column69 カーボンニュートラル2050への道 2021.06.18

その前に「2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減」

政治日程としての「2050年カーボンニュートラル」、国際社会への宣言「2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減」。
ビジネスの世界ではすでに、様々な取り組みが始まっています。
従来の枠組み(「2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減」)のもと、建築・住宅部門は「CO2排出量2013年度比40%減」を掲げてきましたが、目標値が1.5倍に更新された今、より強力な手段が必要です。
ゲーム開始直後、ゴールまでの距離が1.5倍遠のいたゲームのように感じますが、「グリーンイノベーション元年!」との期待もあります。
どうしたら実現できるのでしょうか。

新築戸建住宅が全て「次世代省エネ基準」だったら
新築がすべて「ZEB」「ZEH」だったら

従来の基準で「努力義務+省エネ性能の説明義務」にとどまる戸建住宅の規制が、「新築住宅の次世代省エネ基準以上を義務化」したら?
現在、日本には人が住む住宅はおよそ5400万戸存在し、そのうち「次世代省エネ基準(H11基準」以上を満たすのは10%程度と言われています。
これまで毎年、分譲マンションを含めて約40万戸前後が新築されてきました。
仮に新築住宅に次世代省エネ基準が義務付けられ、同じペースで新築工事が続いて、同等のペースで無断熱の古家が滅失したら。
9年後の2030年には約360万戸の「次世代省エネ基準」住宅が出現し、『次世代省エネ基準以上』の住宅は総戸数の約16%。
これがZEH義務化なら、省エネだけでなく創エネの割合が増えることから、戸建住宅におけるCO"排出削減目標は大きく前進するのでは。
住宅、ビル、工場、倉庫などの建築がほとんどZEHまたはZEB化したら。
目標達成が近づくだけでなく、母数が増えることで技術革新も進み、達成の可能性はさらにアップ!と期待がはずみます。

一次取得世代のミスマッチ

住み心地がよくて、健康によくて、地球環境によくて、エネルギー費の抑制で家計にも優しい。
いいことづくめの省エネ住宅ですが、現在、既存住宅では10%程度、新築でも次世代省エネ基準の達成度は60%程度と言われます。
その主因として、省エネ住宅は省エネなし住宅に比べるとコストアップすること、省エネ基準への適合が努力義務にとどまっていること、があげられます。

またユーザー(施主)と省エネの間にも、利益のミスマッチがあります。
住宅取得のボリュームゾーンは30代の一次取得世代ですが、この世代が住宅で重視するのは ①職場へのアクセス、治安、買い物など立地の良さ ②広さ・間取り。
実際、子育て世代の居住面積は、家族数に応じて推奨される面積(誘導居住面積:都市部で二人暮らし55m2、4人で95m2)を満たす割合が、全世代の中でもっとも低い(都市部で41%)ことが明らかになっています。
引き渡し後に実感できる住み心地以前に、遠い将来に結果がわかる環境への貢献の前に、この世代には住まいに求める大切なことがあるのです。
仕事と子育てを両立させるために利便性の高い駅近や都心部の住まいが求められ、限られた予算を立地にふり分けると住み心地や環境貢献は二の次になる。
一次取得世代=子育て世代の現実が浮かびます。

切り札は給付金?

日本はいまウッドショックの渦中にありますが、その原因と言われたアメリカの住宅需要の活発化は、3度にわたる給付金が原資とも言われています。
一人約15万円が3回なので4人家族なら180万円。
自己資金を足して新築の頭金に、既存住宅ならリフォームできる金額で、その結果がウッドショックの形で遠い日本の住宅市場で証明されているのです。
立地と面積が一丁目一番地の住宅一次取得世代には、それでもハードルは残るかも知れません。
一方で、生活実感から高度な断熱の必要性を肌身に感じ、圧倒的多数を占める既存住宅オーナーには、法や税制の誘導と給付金・即時性の高い支援があれば、断熱リフォームの大きなモチベーションになるのでは。
新築住宅の省エネ化と既存住宅の省エネ化が同時に進めば、9年後の1.5倍増し目標達成にも可能性が見えてきます。

→column70 すぐできる断熱リフォームは? 2021.07.01

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

パリ協定→気候サミット
資源エネルギー庁 カーボンニュートラル
住宅ストック約5,000万戸の断熱性能 平成29年度
新築住宅約95万戸の省エネ基準適合率 平成29年度
誘導居住面積水準 達成率
国土交通省 高齢期住まいの改修ガイドライン
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