京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto

column66 全館空調入門 冷暖房のお勧め 2021.03.12

住まいと健康の深くて長い関係

住み心地がよくて、ランニングコストが少なめで、環境にも貢献できる省エネ住宅。
家づくりのポイントは、
①断熱・気密性能に優れる高気密高断熱の建物
(屋根・外壁・基礎の断熱性 /窓や扉の気密性)
②高効率の住宅設備の採用(冷暖房・給湯・照明)。

では、お勧めの暖房方法ナンバーワンは?
高気密高断熱の建物なら、心地よさは全館空調が一番だと感じます。
ここでいう全館空調とは、温度調整済みの新鮮空気をダクトで屋内の各部屋に届け、室内の汚染空気は排気ダクトで熱交換器に回収し、熱を取り出したあとで屋外に排出する、一連のシステムを指します。
別々だった 「換気」と「温度調整」、室内の快適性を左右する二つの機能を、一元化した考え方です。

全館空調の快適さの源は、輻射熱と対流のバランスです。
温度調整済みの新鮮空気を室内に供給して建物ごと温めるので、空気の対流はあるのですが、暖かさは輻射熱とも言えます。
その使用感は、音もなく肌で感じるほどの気流もなく、冬を忘れる心地よさ。

デメリットは次の3点に集約されると思います。
①取り付け工事費用の高さ
②面積要件
③定期メンテナンス
全館空調には館内すべての24時間換気とエアコン機能が含まれますが、「24時間換気+部屋ごとのエアコン」と比較しても、割高感は否めません。
ただ全館空調では、玄関や廊下、トイレや洗面脱衣室など、一般的にエアコンを取り付けない場所も温度調整されるので、快適性のメリットを光熱費の差額として考慮すると、長期で見ると割高感は低減します。

面積要件は、大きめのダクトスペースと畳6畳程度の機器の設置場所、機械交換時の導入路確保です。
天井裏への取り付けタイプは天井の上に6畳程度のロフトスペースが必須で、30坪前後の一般的な住宅ではプラン的な工夫が求められます。
屋根勾配の関係など難しいことも多く、ご要望があっても導入にいたらない主な理由になります。

導入を自分ごととして考えた時、個人的な懸念は換気扇と専用エアコンの2台の定期メンテナンスです。
個室対応の壁掛けエアコンより扱う気積が大きいので、全館空調システムでは月1回程度のフィルター清掃とシーズンごとのメンテナンスは欠かせません。
20年後、30年後も同じレベルのメンテナンスを続けていけるか不安なような、しかしエアコンより台数が少ないから逆に楽かも・・・。
そんな理由からか、ハウスメーカーで全館空調システムを導入できる場合、定期メンテナンス契約が必須となっているところがあります。
確かにトラブル回避には、年一回の定期点検は有効な制度です。
導入を検討される際には、定期メンテナンス契約も併せて検討されることをお勧めします。


→column67 ウッドショック 2021.05.21

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

全館空調の概念
協立エアテック 全館空調換気システムecocoti
天井裏タイプは面積要件で採用が難しいことも
三菱電機エアリゾート 床置きタイプ
快適感は保証済み sunnyside
  1. 65暖房プレイバック
  2. 64換気は熱交換で
  3. 63家から始まる
  4.  
  5. 62熱伝導率と断熱性能
  6. 61熱の逃げやすさの計算
  7. 60省エネ性能自社評価2
  8. 59省エネ性能自社評価
  9. 58高気密高断熱の定義
  10. 57なぜ高気密高断熱?
  11. 56"C値1なら安心です
  12. 55昔の家はなぜ寒い?
  13. 00バックナンバー