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column56 ”C値1”なら安心です 2020.09.30
住まいと健康の深くて長い関係
省エネにも住み心地にも貢献する、高気密高断熱住宅。高気密の指標となるのが「C値」です。
気密性能の指標「C値」は、住宅の総隙間面積を延べ面積で割った数値。
低いほど気密性能に優れます。
では、どのくらいの数値なら、高気密住宅と言えるのでしょうか。
前回コラムでは高気密住宅の比較としてとして、気密度が低い昔の家を考えました。
風通しの良い昔の家は、冬には寒い家だったのです。
昔の家はC値12程度と言われ、その換気回数は真冬(室温20℃で外気温0℃、風速5mの条件)なら、35分に1回は室内の空気が入れ替わる計算でした。
古家特有の、暖房を消した途端に寒さが侵入する現象は、断熱性能の低さを考慮するまでもなく、気密性能だけで説明できました。
真冬も快適な家にするために、高気密高断熱の家が望ましい理由です。
今回は実在する弊社の作品事例で、C値と換気回数の関係を確認します。
まず、断熱気密性能がもっとも問われる、真冬の気象データを探します。
立地エリアの1月の平均気温は3.4℃、最低気温は-3.2℃。
同じく1月の平均風速は1.2m/h、日照時間は月83.3hで1日約2.7h。
冬は穏やかな北風、日照時間が少なめの、ちょっと寒い立地です。
室温20℃キープを目指して、内外の温度差は最大20℃と仮定。
その物件の、建築工事当時に検査したC値は0.48でした。
事例2のチャート右グラフで、一般的な住宅地、温度差20度、風速1.2mをマークしてから、続いて左グラフC値0.5の線を見ると、換気回数は0.1の約半分の0.05回のあたりと読めます。
同じ条件でC値12程度の昔の家の換気回数を見ると、ちょうど1くらいで1時間に一回、自然換気される計算です。 高気密住宅と昔の家を気密性能だけを比較すると、実に20倍の性能差が確認できます。
ところで、建築基準法で定められた換気回数は1時間に0.5回。
2時間に1回は室内の全ての空気が新鮮空気と入れ替わることが必須、と考えます。
事例2の真冬の最低気温時に自然換気される回数は1時間に0.05回、法律で定める換気量の1/10。
自然換気だけだと20時間に1回しか換気できないので、機械による24時間換気は必須ですね。
気密性が高いほど、常時換気も求められます。
ちょっとわかりにくい、C値と換気回数を示すチャートの左のグラフ。
下のメモリC値と、曲線が示す換気回数で、両者の関係を表します。
よく見ると、C値は2の半分「1」のあたりから、換気回数の曲線はほぼ垂直です。
C値は「1」以下なら、自然換気の回数はゼロに近づく=外気の影響は受けにくい、つまり「温度保持効果は充分に高い」。
「C値は1以下でOK、0.5ならばっちり!」と言ってよさそうです。
経験から来る実感とも、一致する結論でした。