京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column53 コロナの時代の家づくり 2020.08.19
家族一人ひとりのための家
本年1月24日に最初の感染が発表された新型コロナウィルス感染症。再び感染の増加傾向が強まり、生活への影響が深刻化しています。
人と人が出会って生まれる相互作用が、文明の発達、科学、文化、経済、教育、政治ほか人類の発展の源泉であると、信じてきました。
ところが、その”出会い”が感染を広げ得ると認知され、世界は様変りしました。
対面して近づくこと、握手や抱擁が、危険な行為になりました。
訪問したり会食に誘うことが、非礼になりました。
その現象が、南極以外の全ての大陸、全ての地域で同時進行しています。
人は本来、社会的な部分と私的な部分を併せ持ち、バランスを保ちながら一人の人間としての人格を維持しています。
会社や家、その中間のカフェなどのスペースも、目的によって使い分けてきました。
それが今、外出しないことがマナーとなるコロナの時代。
人がいるべき場所は、それぞれの家だけになりました。
家は食事や睡眠の生命維持活動だけでなく、仕事、教育、趣味、交流など、行動の全ての舞台を兼ねるようになりました。
コロナの時代の家づくりとは。
考えない日はありません。
家に入ったらすぐに手指消毒できるよう、玄関付近に手洗いスペースを。
非接触で反応する水栓やハンドソープのディスペンサーを。
鍵穴に差し込まずに解錠できる電子キーを。
寝室を分けることができる予備室を。
リモートワークできる書斎を。
家の中の感染リスクを低減する具体的なアイデアは、いっぱいあります。
でも、やっぱり。
家づくりで大切なことは小手先のアレンジではなく、生活を建築にすること。
それは、家族がストレスなく行動できる動線と平面計画。
理想を現実にする機能性。
身体が喜ぶ快適さ、心を満たすデザイン、街を豊かにする景観美。
「暮らしやすい家とは?」
「自分自身にとって、家族一人ひとりにとって。」
考え続けて、カタチにすることが、家づくりです。
「快適で暮らしやすい、この家を建ててほんとうに良かった!」
喜びの声をいただくたびに、デザインの良さや快適性の作り方に方程式があるけれど、暮らしやすさの作り方には方程式はないと、深く感じます。
「暮らし」のスタイルは家族ごとに違うからです。
家族数、子供の有無、職業の有無、勤め先までの交通手段。
日々の買い物、趣味、介護や看護の有無、ヘルパーや介助人の有無。
自家用車の台数、二輪車の種類と台数、ペットの有無と居場所。
食事の習慣、生活時間、家族以外との交流のスタイル。
一人ひとり違う生き方が、家族の数だけ集まる場所が「家」。
「暮らしやすい家」は、家族の数だけ存在します。
中世を終わらせたペスト、戦争の時代の幕を開けたスペイン風邪。
世界レベルの感染症の流行は、歴史の歯車を押すと言われます。
新型コロナウィルスは今現在進行中の世界的な現象です。
いま姿を現しつつある新しい世界。
そのとき、帰りたい家とは。