京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column48 熱烈!断熱塾 省エネ住宅の現在 2020.06.09
新築戸建住宅の1/3は高気密高断熱住宅
高気密高断熱住宅を計画する際、もっとも注意する3つのポイントがあります。それは、
1 断熱 外壁・屋根天井・床の断熱材で、熱・冷気の出入を防ぐ
2 気密 開口部(窓や扉)や屋根天井・壁・隙間の、空気の出入を防ぐ
3 換気 室内温度を保持できる換気扇を採用する
建物に出入りする空気を極力減らして、外気温が室温に与える影響を最小化する断熱と気密、屋内の空気を新鮮に保つ換気。
この3つが同時に効果を発揮できれば、真夏も真冬も快適に住める、高気密高断熱住宅となります。
このコラムでは「高気密高断熱」を住み心地を高める技術として紹介しています。
ですが、高気密高断熱な住宅はもともと、居住者の快適性を目指して始まった考えではありません。
実はその目的は省エネで、1979年に交付された「省エネ基本法」が始まりと言われています。
70年代、2度に渡って日本を揺るがせたオイルショックは、エネルギー資源を輸入に頼る国の脆弱性を浮き彫りにしました。
先日もコロナ禍でトイレットペーパー不足がおきましたが、オイルショック時も同様の事態が発生しました。
そこで「少ないエネルギーで生活できるよう行動変容しよう!」、と普及したのが省エネの考え方です。
当時、省エネは「工場」「輸送」「建築」「機械」の4部門から進めるとされ、現在に続く住宅の省エネ基準は、「建築」部門の一つとして定められました。
核家族化による世帯数の増加、家電製品の浸透、生活様式の変化などにより、60年代と比較すると、日本の住宅のエネルギー消費量は半世紀で4倍に達しました。
工場や輸送、機械などの企業部門では、産業構造の変化や技術革新でエネルギー消費量の増加が比較的緩やかだったため、一般家庭での省エネ対策が急務と考えられるようになりました。
住宅では主に、動力・照明、冷暖房、給湯で、エネルギーが使用されます。
そこで低電力のLED照明やエコキュートなど高効率給湯と共に、冷暖房エネルギーを節約できる高気密高断熱の省エネ住宅が推奨されます。
エコポイント、フラット35、税制面での優遇など、様々な形でインセンティブも導入され、「省エネ住宅」の認知度も高まりました。
では、「省エネ=高気密高断熱住宅」はどの程度、日本の住宅市場に浸透しているのでしょうか。
平成30(2018)年発表の国土交通省の資料によると、「平成11年次世代省エネ基準」を満たす住宅は、その時点の既存住宅のうち約5%。
平成30年当時の最新の省エネ基準は、「平成28年基準」です。それより2代前の基準さえ、総戸数のうちの5%しか満たしていなかったようです。
住宅の着工件数で見ると、令和元(2019)年の着工新設住宅のうち分譲を含む一戸建て住宅は約43万戸。
省エネ住宅が確実と言える「長期優良住宅」の認定は、毎年約10万戸超。
省エネ以前の古い住宅が依然として既存住宅の多くを占める日本ですが、戸建の新築住宅では1/4が省エネ住宅です。
住宅の省エネ化は、今後も続くと思われます。
時代が変わって、社会が求める省エネの目的は、エネルギー節約から環境保護にシフトしてきました。
個人の視点からは、居住性、住宅の住み心地のよさを追求する流れが続いています。
四季を通じた快適性のためにも、これからも気密断熱性能を追求します。