京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column65 全館空調入門 暖房プレイバック 2021.02.19
住まいと健康の深くて長い関係
住み心地がよくて、ランニングコストが少なめで、環境にも貢献できる省エネ住宅。家づくりのポイントは、
①断熱・気密性能に優れる高気密高断熱の建物
(屋根・外壁・基礎の断熱性 /窓や扉の気密性)
②高効率の住宅設備の採用(冷暖房・給湯・照明)
エネルギー創出(太陽光発電等)も含めると、生活で排出するエネルギーの消費量と創出量がイコールになる、ゼロエネルギー住宅に近づきます。
冬の時期のご相談で、必ず話題になるのが「寒くない家づくり」。
そのココロは上記①と②に尽きますが、では②高効率の機器のうち、ベスト・オブ・暖房は何でしょうか?
その前に、弊社の暖房の歴史を振り返ってみます。
まず薪ストーブのブームがありました。
新建材への反動で自然素材の家づくりが広がり始めた頃、見た目も心も温まり、家族が集まる薪ストーブが大人気でした。
ハウスメーカーや工務店の商品化住宅では実現しにくい薪ストーブは、注文住宅の自由度と快適性の象徴でもありました。
暖炉も薪ストーブも燃焼して空気の対流を起こし、シーリングファンで天井付近の暖気を下ろして、部屋全体をあたためます。
物質同士の熱伝導を利用した暖房が床暖房で、温水式や電気式があり、リビングなど部屋を限定して敷設することがありました。
断熱ブームの高まりと共に注目されたのは、蓄熱暖房機など輻射熱の暖房機です。
格安な深夜電力で本体内部のレンガに蓄熱し、輻射熱で家を温めます。
気流も音もない、日向のような快ちよさが評判になりました。
土間コンクリートを蓄熱層とする床下暖房も同じ輻射熱の暖房で、燃焼による水蒸気なし、CO2発生なし、音なし、気流なしで、真冬に冬を忘れる心地よさ。
熱伝導の床暖房とは違い、床下から建物全体の温度を上げて、その輻射熱が人に温さを感じさせます。
深夜電力のメリットはなくなりましたが心地よさは健在で、弊社では今シーズンも大いに活躍しています。
どの場合も夏の冷房のためにはエアコンも設置するので、住む人は季節や必要な温度設定で、機器を使い分けることができます。
その後に高気密高断熱+全館空調を体験し、その快適さに瞠目しました。
夏も冬も室内の温度は一定、家の中は「暑さ・寒さ」を卒業したような心地さ。
温度調整した新鮮空気を各部屋に届けるシステムは、対流と輻射熱のベストバランスといえます。
ほかに、採用事例はないものの相談が多かったのが、室内に設置した特殊なパイプに温水や冷水を流す冷熱暖房で、これも輻射熱の原理です。
最も普及が進むエアコンは、対流式の代表格。
メーカーのたゆまぬ努力で、今や日本のエアコンは素晴らしい機能を備えています。
温度調整だけでなく湿度の調整も、一部屋だけでなく複数の部屋を同時に、壁掛けだけでなく天井付けや床置きも、フィルター掃除も楽に。
部屋ごとの温度差が発生しますが換気経路の工夫や天井付けエアコンの利用で、ある程度軽減できることがわかってきました。
年々、音は静かに、省エネ効果も高まっているので、夏の冷房はエアコンの一人勝ちと言って差し支えないでしょう。
気流や音を感じない、存在を忘れるような暖房を希望するなら、今は様々な選択肢があります。