京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column74 令和の時代の家づくり 2021.08.25
マクロデータで見る、家づくりの現在
そろそろ家が欲しいけど、どうやって?、費用は?家を自分ごととして考え始めると、様々な疑問が浮かびます。
そこでマクロデータ を使って、令和の時代の家づくりを俯瞰してみます。
個人で新たに家を所有する方法は、①注文住宅を建てる、②新築分譲住宅(戸建、マンションetc)を買う、③中古分譲住宅(戸建、マンションetc)を買う、のいずれか。
着工件数や既存住宅流通量を見ると、「家を建てる」人(グラフ1 青色「持ち家」)より、新築や中古物件で「家を買う」人(グラフ1 緑・灰・黄色)が多数派です。
「新築」か「中古」かでは、長らく新築住宅の割合が多い時代が続きましたが、2014(平成26)年の消費増税以降は、中古物件(グラフ1 黄色「既存・・・」)を選択する世帯が多数派に転じました。
世帯主(建主または借主)の平均像
国土交通省「住宅市場動向調査R02」から、属性の違いなどを見てみましょう(グラフ2〜6は同調査報告書に基づく)。世帯主の年齢は、賃貸は20代、新築の注文住宅と分譲マンション・分譲住宅取得世帯(以下「取得世帯」略)は30代、中古住宅とマンションは40代、リフォームと建て替えは60代以上が、一番多いようです(グラフ2)。
住宅取得に限れば、平均年齢は注文住宅40.4歳、新築分譲住宅39.6歳、同マンション43.5歳、中古住宅46.8歳、同マンション47.1歳。
20代で家を出て、30代後半から〜40代で住宅購入、60代でリフォームや建て替え・・・ライフストーリーをそのまま実感できるデータです。
世帯年収を比較すると、興味深いデータが現れます(グラフ3)。
日本全体の平均は553万円(厚生労働省2019年国民基礎調査)、中央値は473万円(平均は少数の超富裕層の影響が出やすいため、中央値が現実に近いと言われる)。
この住宅市場動向調査では、注文住宅を取得した世帯の平均世帯収入は804万円、分譲マンションなら879万円です(*全国ではなく三大都市圏)。
都市部とはいえ、全国平均と比較するとずいぶん高い印象ですね。
調査の対象は期間中に住み替え・建て替え・リフォームなど何らかの住宅取得・改善を行った世帯です。
いずれの世帯にも、しっかりした経済基盤があることが窺えます。
どんな人がどんな家を選択するか
住宅取得の選択肢「家を買う」or「家を建てる」、買うなら「新築」か「中古」か。選択の背景には、どんな属性や志向があるでしょうか。
「なぜその住宅を取得しましたか?(複数回答)」
取得住宅の種類別にその理由を見ると、志向の違いが見えて来ます(グラフ4)。
分譲住宅世帯では「一戸建てだから」「新築住宅だから」がダントツトップ。
分譲マンション取得世帯は「立地条件」へのこだわりが強く、ついで「新築住宅だから」「マンションだから」。
いずれも新築志向が強く、かつ分譲戸建には分譲戸建への、マンションにはマンションへの、強いロイヤルティが見えます。
言わば「新築マイホーム」党の中に、「一戸建て派」と「都心マンション派」があるようです。
中古住宅取得世帯では「価格が適正」がトップ。
世帯年収も平均年齢も「分譲住宅」より高めで、「一戸建」と「立地環境」、「間取り」「面積」(設備等に関する選択理由 グラフ5)を重視。
世帯年収(グラフ2)と年収倍率(グラフ6)で、志向がはっきりしました。
世帯年収では必ずしも「新築派」が高収入というわけではないのですが、購入価格に対する年収倍率を見ると「中古派」の倍率の低さが目を引きます。
住み心地(高気密・高断熱)、デザイン、安全性など、住まいに対する感覚的・情緒的な志向が薄いのも特徴的(グラフ5)。
「中古住宅」党は、マイホームに対する夢より、家計を圧迫しない予算や部屋数(面積)を重視する、堅実生活志向のようです。
マクロデータなのであくまで傾向に過ぎませんが、住宅という大きい買い物を前にした「新築党」「中古党」それぞれの志向の違いが見えてきます。
注文住宅についても見ていきましょう。