京都の建築家が教える家づくりのツボPoint in the order housing @Kyoto
column76 令和の時代の家づくり 注文住宅という選択 2021.09.17
注文住宅にしたいから注文住宅
新築か中古か、建築か購入か、戸建かマンションか、ハウスメーカーかそれとも建築家か・・・、住宅の取得には様々な選択肢があります。実際に住宅取得した世帯がどのような住宅を比較検討したかを見ると、検討とその結果はほぼ一致することがわかりました(グラフ1)。
注文住宅を選択した世帯は注文住宅を、分譲マンションを購入した世帯は分譲マンションを、比較検討しています。
「注文住宅か分譲マンションか、それが問題だ・・・。」
というような逡巡は、あまり起こらないようです。
では「注文住宅を建てる」を選択するのは、どんな世帯でしょうか。
国土交通省の「住宅市場動向調査」の最新(2020(R02)年)報告書から、注文住宅を取得した世帯の実情を探ります(グラフすべて同報告書から作成)。
年ごとの変動がありますが、傾向の把握にはマクロデータが最適です。
一次取得と二次取得、新築と建て替え
注文住宅を選択した人の住宅の取得回数は、「今回が初めて」の一次取得が80%、二次取得以上が19.9%(グラフ2)。全国と比較すると、近畿圏の二次以上の取得割合が多いですね。
年齢は、一次取得の平均は38.9歳、二次取得は58.9歳。
注文住宅を建てる世帯は、20〜30代がメインの一次取得層と、50代以上が最多の二次取得層の、二つの層があることがわかります。
注文住宅を建てる場合は、住宅建築より先に土地の取得が発生します。
家を新築した層では約70%以上が土地からの購入でした(グラフ3)。
現在では、建築条件付の土地を買って同じ会社で住宅を建築する方式が一般的なので、「注文住宅=土地付き+工事付き」の世帯割合が多いようです。
建て替えでは半数以上が、相続などで敷地がある世帯です。
「建て替え」で「新築」は26.4%、矛盾するようですが古家付きの土地を購入して、解体、新築した世帯とみられます。
マイホームブームで開発された60年代以降の団地が、高齢化や少子化で居住者が減少し、好適地に古家付きの売り土地が増えているように感じます。
検討中の古家付き土地の視察に行くと、周囲は高級住宅地にかかわらず半分が空家、残りは高齢世帯、ということがよくあります。
界隈の建て替えや土地販売が進んで、数年後には新築住宅の割合が増えていた、ということもありました。
住宅地はそうやって、新陳代謝していくようです。
資金面では、新築世帯の86%が住宅ローンを利用しますが、利用しない層も一定程度存在します(グラフ4)。
ローン以外での資金の準備方法は、預貯金などの金融資産や相続、贈与など。
いずれも年齢が上がるほど積み上がる資金なので、建て替え世帯では半数が自己資金だけで住宅建築費を用意しています。
年齢層が若く、土地からの購入になる新築世帯と、年齢層が高く土地購入負担のない建て替え世帯の違いが見えます。
資金総額と内訳をみると、一次取得者の資金総額4,486万円のうち自己資金は2割程度ですが、二次取得者は総額5,482万円のほぼ半分を自己資金が占めます。
家族が増えて一次取得、資金に余裕ができて二次取得、といった家づくりの段階があるかもしれません。
とりあえず古家に住みながら、資金を準備したうえで建て替えで夢を実現、そんな家づくりもありそうです。
新築・建て替え前の住まいは?
住宅取得前の住まいの築年数は、新築世帯が住んでいたのは築15年以内の比較的新しい物件が最多。築浅の賃貸から土地購入して新築へ、そんな家族像でしょうか。
建て替え世帯の以前の住まい、最多は築36~45年と46~55年、1970年代から80年代にかけての住宅です。
建て替えのご相談は、まず第一声が「寒くない家にしたい」が多いのですが、このデータからはその実感が裏付けられます。
断熱や気密の概念が浸透していなかった昭和の家は、真冬の寒さは今の住宅とは比べ物になりません。
家には家族や街の歴史と言う面もあるので、必ずしも新築がいいとは限りません。
手を入れながら丁寧に住み続けることは、サスティナブルの点からも重要です。
そのプラットフォームとなる家は、部屋数や面積だけでなく、住み心地に関わる部分まで丁寧に作られてこそ、受け継ぐことができます。
一年を通じて住み心地がよく、省エネで、メンテナンスを続ければいつまでも住み続けることができる。
令和の時代の住宅には、未来に継承できるそんな質の高さが求められます。