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column110 全館空調効果@竹林風洞 2023.09.14
全館空調効果だった
この4回、全館空調を紹介してきました。順番から行くと次はダクト方式全館空調ですが、ちょっと寄り道して、弊社自宅「竹林風洞」について、壁掛けエアコンの全館空調効果をご紹介します。
結論から言うと、条件が揃えば壁掛けエアコンで全館空調効果を得ることは難しくない、と言う事例です。
竹林風洞とは
竹林風洞は築17年の弊社事務所兼用住宅です。おおよそ間口8m×奥行き30mの細長い北向きの敷地で、建物の延べ面積は約53坪。
外壁の断熱方法はウールの充填断熱と外張り断熱のダブルバリア、屋根は吹付断熱材のアイシネン150mm。
南北には床から天井までの大きいペアガラスのアルミサッシを設置、断熱等性能等級は4以上5未満程度。
18年前は良かったけれど、現在の観点からは胸を張れる仕様ではありません。
にも関わらず、夏も壁掛けエアコン1台の全館空調効果で快適に過ごせます。
ポイントは吹き抜けと24時間換気
南北に細長い建物なので、壁掛けエアコンは北側と南側、一階と二階に1台づつ、2kwの比較的小さいエアコンを合計4台設置。執務時間の午前9時から午後6時までは北側2階事務所のエアコンを、その他の6時間ほどは南側のエアコンを稼働します。
夕方までは南北をつなぐ通路部分の換気扇がブースターファンの役割を果たして、北側の冷気を南側1階まで運びます。
エアコン1台で空調、気温と時間によって補助エアコンも利用。
竹林風洞は全館空調や効果を設計に織り込んだわけではないのですが、結果的に壁掛けエアコンの全館空調効果を享受しています。
基本は高気密高断熱
・家の中央の吹き抜け上部にエアコン設置・個室を壁で区切らないプラン
・断熱等性能等級4程度の断熱気密性能
これらの条件が揃えば、壁掛けエアコン1台で全館空調効果を得ることは難しくありません。
断熱等性能等級5以上の建物、樹脂枠やトリプルガラスの高機能窓、熱交換型の換気扇などが揃えばより効果は高まります。
53坪の竹林風洞でエアコン1台×16時間程度の稼働で暮らせるので、30坪前後の住宅で24時間稼働なら1台のエアコンで十分と感じます。
壁掛けエアコンの全館空調効果は、エアコンのある場所を適温のたまり場とし、家の各場所に適温空気を運びます。
吹き抜けで家全体が繋がるプランが前提で、個室ごとのプライバシーを確立したい場合には別の考えが必要になります。
それが本来の全館空調、ダクト方式の全館空調です。