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column129 家づくりの転換期〜次の地震に備える家の質〜 2025.12.25

現行水準2000年基準は4割

12月8日夜半、青森県東方沖でマグニチュード7.7の地震が発生しました。
プレート境界で起こる典型的な地震と説明されましたが、日本周辺には南海トラフや千島海溝など、巨大地震を引き起こすプレート境界が複数あります。
阪神大震災や熊本地震のようにプレート型地震以外だけでなく、陸域の浅い断層型地震も大きな災害につながります(図1)。
日本は地震大国、毎日地震は発生し、自宅が被災する危険性はいつも存在します。

住宅には、地震の揺れで倒壊や崩壊を起こしにくい構造が求められます。
建築の基本的な性能を定めた建築基準法では、現行規定は阪神大震災以降に改定された「2000年基準」です。
つまり、2000年基準以前の築26年以上の木造住宅のほとんどは、必要な水準を満たさないことになります。
総務省「住宅・土地統計」によると、持ち家の既存住宅で2000年基準を満たすのは約4割、半数以上の木造住宅は必要な水準を満たしません(グラフ1)。
築古住宅の地震への備えは、耐震診断を受けて耐震改修するか建て替えるか、建築主の自主的な選択に委ねられます。

耐震基準と耐震等級

建築基準法で求められる基準とは別に、品確法に定める「耐震等級(構造の倒壊・崩壊しにくさ)」という目安があります。
一般的には「耐震等級○」の方が、耳馴染みがあるのではないでしょうか。
建築基準法の2000年基準は耐震等級1+αと言われ、品確法では「極めて稀に発生する地震(震度6~7)による力に対して倒壊・崩壊等しない程度」と規定されます。

実は「倒壊・崩壊しにくい」は、「地震後も住める」と同義語ではありません。
命は助かったけど、半壊状態の家には戻れない。
そんな悲劇を避けるには、被災後も住める基準以上の備えが必要です(図2)。

地震保険は生活支援

火災保険に加入する家が火災で損害を受けたら、修理費用や再建費用は火災保険金で補償されます。
では地震で家が損害を受けたら?
修理費用や再建費用は、地震保険金で補償されません。
地震保険は、被災加入世帯への生活費援助が目的の国が保証する保険で、公的性格のため損保会社全社共通の内容です。
火災保険とのセット加入で、掛け金は火災保険の30~50%に止まります。
地震への備えは、建築主が地震で倒壊・崩壊しにくい構造の建物を作るという、高い意識を持つしかないのが現実です。

耐震等級3の普及

2016年に起こった熊本地震の悉皆調査によると、2000年基準以前の住宅の8割が損壊以上の被害を受けました。
2000年基準(耐震等級1+α)の木造住宅でも3割以上に損壊が見られ、5%程度は全壊・倒壊しました。
これが耐震等級3では、無被害が9割に上ります(グラフ2)。
このことが広く知られた結果、耐震等級1(グラフ2では「2000年6月以降」と表記)は必須、耐震等級3が新築木造住宅の目指すべきレベルとなりました。

また熊本や能登半島の地震では、地震で倒壊した建物が住宅街の道を塞ぎ、消火や救出活動の妨げになるケースが相次ぎました。
地震に強い家は、広く公共のためにもなります。

2025年現在、既存住宅の6割弱が耐震等級1未満。
住宅の質を高めて国民の生命財産を守ることこそ、国防の第一歩です。
次の大震災の前に全ての住宅が最低でも耐震等級1を確保できるように。
住宅は質の向上に向けた転換期にさしかかっています。

イラスト1:文部科学省・気象庁「活断層の地震に備える」から作成
グラフ1:総務省「2023/R05 土地家屋統計調査」から作成
*総返済負担率:一ヶ月あたりの返済額を世帯収入で割った数字

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

図1 海溝(境界)型地震と活断層
グラフ1 耐震性能別の住宅ストック数
図2 品確法の耐震等級
図3 地震保険の概要 東京海上日動HPより
グラフ2 2016年熊本地震益城町の悉皆調査より
被災家屋の交通への影響 2023年能登半島地震
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