京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column10 華麗なるペンダントの世界 2017.08.08
・明るさ、サイズ、質感、価格のバランス
・照度が必要か、ムードが必要か
・1灯遣いか多灯遣いか、ポイントか、面か、ラインか
家づくりは断熱などのスペックと、楽しさ・美しさを感じるエモーションが両輪となって、推進します。
美しさや楽しさを感じやすいのがインテリアデザインで、中でもペンダントライトは気軽に歴史的な名品を手にできるアイテムです。
「建築家の住宅ぽい」感じが一番出やすいのが、北欧の名品、ルイス・ポールセンのペンダントライト(p1)。
左上のトルボーは、乳白ガラスのものを弊社作品でもたびたび使用している、名品中の名品。
ダイニングテーブルのペンダントとして最も使いやすく、サイズ、照度、価格のバランスに優れ、主張し過ぎず、最近では写真のようなカラフルなものも登場しています。
右上のアーティチョークや左下のスノーボールは、一度見たら忘れられないルイス・ポールセンの代名詞。
最近ではあのPH50にも様々な色があって、北欧テイストなカラーリングは見るだけでも楽しめます。
面積に限りがある住宅では、ペンダントライトはダイニングテーブルの上に一つ下げることが多いのですが、最近は多灯づかいを見るようになりました(P3)。
写真のカラバッジオは豊富なサイズも特色で、小は110mmφから大は550mmφまで、照度もハロピン25Wからシリカ150Wまで揃います(P3)。
空間にパンチを効かせたいとき、わざと色やサイズの違うものを混ぜて使うこともあります。
ダイニングのペンダントとして使用するときには、デザインと共に照度も大切です。
オシャレ度の高い海外製品のペンダントは、照度が極端に低いものが少なくありません。
カラバッジオも110mmφはハロピン25W、160mmφでシリカ40Wですから、ダイニングテーブルに一灯だと夜には新聞や本は読めない明るさです。
弊社ではダイニングテーブルの照度は(消費電力の表現ですが)合計で100Wを超えるように考えます。
明る過ぎても疲れたり暑かったりするので、大きめのペンダントにはライトコントロールも併設するようにします。
欧米のインテリアデザインでは、ペンダントライトを1灯ではなく、小さい照度の器具を複数つけて有機的な多灯づかいをする例を多く見かけるようになりました。
多灯づかいの極端な例としては、光ファイバーをたくさん下げる使い方(P5)。
光ファイバーは加工が容易でイメージ通りの照明効果を上げやすく、面を構成したり、使い方によっては時空を表現することまで可能で、日本でも多くのホテルやインスタレーションで取り入れられています。
一見、どう考えても住宅には向かないように見えますが、階段吹き抜けや玄関ホールに、例えば渦を巻くようなデザインで下げたら、意外に似合いそうです。
また欧米では、寝室やリビングなどでペンダントライトを使う事例も多く見かけます(P6)。
海外製品を使うときは照度に注意!と書いたのは、対象を見るための照明ではなく、デザインコンセプトにあった空間演出をするための照明が多いからで、その本領を発揮するのがこのような使い方。
壁際の間接照明、抑制された色調と質感、大胆な壁紙、天井に至るまで一分の隙もないデザインが、不定形な形のLED照明で完成します。
知恵とアイデアで勝負だな〜と感心するのが、テープライトを壁や天井に埋め込む使い方(P7 左)。
住宅の中でどうしてもできてしまう日光が届かないスペースを、テープライトだけで楽しい空間に変身させています。
びっくりしたのが、角度のついたペンダントを多灯づかいすることで、メリハリの効いた空間を作り出す使い方(P7 右)。
コウモリが襲来したようなペンダントの演出は、前衛的なのにユーモラスで暖かい雰囲気を作り出しています。
照明には、器具一つで空間の性格や雰囲気を作り出す力があります。
素敵な照明が見つかったら、毎日が輝くことは間違いなさそうです。