京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column11 夏の省エネ省コスト対策とは? 2017.08.23
・「エアコンはつけっぱなしが省コスト」は正論
・室温維持に必要な消費電力は、断熱性能に左右される
・最適な室内環境の構築には、断熱、換気、空調機器
・窓際対策、換気による気流計算も重要なポイント
残暑が厳しいこの季節、気になる省エネ方法が、
『エアコンはつけっぱなしの方が電気代が安い』
と言う説です。
本当でしょうか?
消費電力量を考えると、正しいと言えます。
エアコンの電力消費が一番多いのは、スイッチオンから設定温度になるまで、と言われます。
室温34度の空間を28度に冷やす消費電力が、室温28度の空間を28度で維持する消費電力より大きい、のは明らか。
エアコンはつけっぱなしの方が電気代が安い、と言われる所以です。
この説に大きな影響があると思うのが、建物の断熱性能です。
魔法瓶の中のように完璧な断熱性能が実現できれば、室温28度の空間を28度に保つために、ほとんどエネルギーを必要としません。
断熱性能の高い建物なら、エアコンつけっぱなし説が有利と思われます。
ところが現実の建物では、壁や屋根、窓を通じて、室内に高い外気温が侵入します。
壁や天井の断熱層が薄かったり脱落していたり、湿度で熱橋と化したり・・・断熱性能の劣化要因は数多く存在します。
また、夏は東西面からの直達日射量が最大になるため、西陽の入る大きな窓があったら、温度上昇を招く要因になります。
壁や屋根、窓の断熱性能が極端に低く、西側に遮光遮熱対策を施していない大きな窓がある室内では、空気を冷やすスピードと熱が侵入するスピードが拮抗して、電力消費が増加すると考えられます。
そんな建物の場合は、室内に人がいる時だけエアコンを使う方が、電気代は安くなるかも知れません。
居住環境に左右されるため、単純な解はなさそうです。
真夏や真冬など外気温と快適温度に差がある季節、快適な室温を保つために必要な条件を列挙してみます。
①外壁・屋根など躯体の断熱性能
断熱材の素材、厚み、外張り等の付加断熱の有無で、断熱性能は大きく異なります。
②壁や天井内部の通気層
壁や天井内部を空気が出入りする外壁通気工法は、壁体内結露の防止のみならず夏の壁断熱にも効果があります。
③窓・玄関扉の断熱性能
ペアガラス、トリプルガラス、遮熱ガラス、樹脂サッシ、断熱ドアなど、断熱性能の高い製品を選択すると、建物の全体の断熱性能が上がります。
④24時間換気
法律で定められた24時間換気ですが、壁に穴を開ける換気扇は断熱の盲点。温度調整された空気を給排する熱交換型で断熱性能が高まります。
⑤窓の遮光、遮熱対策
ブラインド、カーテン、障子、シェードなど、窓際の対策も効果あり。開放感と断熱の両立には、外付けブラインドも有効。
⑥建物レイアウト
真夏の直達日射を緩和し、真冬の直射日光を最大化するために、屋根や庇の角度まで考慮した平面プランが求められます。
⑦空調機器
エアコン、全館空調、蓄熱暖房機など、室内側で室温を調整する機器の選定は、断熱方法を考慮しながら選定します。
快適な室内環境の構築には、機器の使い方だけではなく、建物の作り方も重要です。
壁・天井・開口部の断熱性能が高く、熱交換型の換気扇を適切に設置した室内は、換気扇が、エアコンで温度調整された空気を、室内の隅々に運ぶ役目を果たします。
断熱と空気の流れを綿密に計算することでも、省エネと省コストを実現することができます。