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column113 全館空調のメリット 2023.10.26

プロが全館空調をお勧めする理由

急速に認知が広がる全館空調。
壁掛けエアコンの全館空調効果も人気ですが、本来の全館空調はダクト式です。

近年、住宅専業の設計事務所はもとより、大手ハウスメーカーから地域密着のディベロッパーまで、住宅業界のあらゆる階層で、全館空調をお勧めしています。
一様に謳われるのが、全館空調の多くのメリットです。
機器や方法のバリエーションはありますが、高気密高断熱住宅の全館空調はすでに、ハイエンド住宅必須設備との認識が定着しつつあります。
なぜ住宅業界のプロが、こぞってお勧めするのでしょうか。

理由の第一は、とにかく気持ちいいこと。
エアコンの冷暖房と比較した時、その気持ち良さが際立ちます。

エアコンの各種問題

広く普及している壁掛けエアコンですが、実は多くの欠点があります。
冷房時も暖房時も室内に温度差が発生、廊下など居室以外との温度差も顕著。
初動時は強い音と気流が発生し、高負荷運転でエネルギーコストもアップ。
間欠運転で室内の放射効果は得られず、換気機能もないので別に換気扇が必要です。

便利な壁掛けエアコンも、住み心地の観点からはベストの選択とは言えず。
一方の全館空調も、機械室のエアコンで最適温度を作る設備です。
しかしその適温空気の作り方と届け方に大きな違いがあり、エアコンにない快適感を届けることができます。

全館空調の快感

壁掛けエアコンは室内空気を温度調整しますが、全館空調は外気を取り込みます。
新鮮な空気は適温に調整されて、ダクトを通じて各室まで供給されます。
熱交換換気するので、別途、換気扇を設置する必要はありません。

全館空調は24時間運転で、室温は設定温度に徐々に近づきます。
大きな吹き出し音や強い気流が発生せず、穏やかに作用します。
シームレスな温度調整で室内は常に適温保持できるので、建物内部では壁天井からの緩やかな放射熱も得られます。
家全体のシステム運用で部屋の上下間も、居室とそれ以外も温度差なし。
室内環境の完全なバリアフリーが実現します。
家中が常にキレイで適温の空気に満たされるので、真夏は「まるで高原にいるみたい」、真冬も「温度差がなく、足元が冷えることもなくなって」。

プラン・デザインの自由度、省エネ、省スペース

全館空調のメリットはほかにも。

適温空気は小さい給気口から届くので、エアコン室内機はありません。
機械室のエアコンは1台なので、室外機も1台だけ。
室内でも屋外でも目立たないため、建物のインテリアも外観も、デザイン上のノイズを最小に抑えます。

ダクトを通じて強力に給気するので、壁掛けエアコンの全館空調効果のように、吹き抜けやロフトなど平面プランの制約はありません。
意外にメリットを感じるのが扇風機やヒーターなどの季節用品が不要で、もちろん灯油などの備蓄も必要ないところ。
機器の入れ替えも納戸収納もなし、手間が省けて省スペースです。

機械室のエアコンは熱交換器で室温に近づけた空気を温度調整するので、常時、エネルギー効率のいい低〜中負荷運転です。
エアコン一台で省エネ運転、省コストと言われるポイントです。

ダクト方式の全館空調を経験すると、その心地良さとメリットを実感できます。

→column114 木造住宅の全館空調 2023.12.06

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

真夏も高原のような住み心地 humming
壁掛けエアコン 夏は局所冷房
壁掛けエアコン 冬は局所暖房
全館空調ダクト式 夏の給気は熱交換で清浄な適温
全館空調ダクト式 冬の排気も熱交換で室温保持
エアコンのない室内 はなあふ家
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