京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column24 セレブの至言 2019.05.24
■著者のリノベーション経験が本に
最近「ビフォーアフター」などのテレビ番組や「HOUZZ」などのwebプラットフォームで、セレブのリフォームやリノベーションの様子を見る機会が増えました。豪邸に目を見張ることもあれば、「セレブでも家や家族に関しては、同じような悩みを抱えていたんだな・・・」と、親近感を感じることもあります。
今回、著名ブロガーのちきりんさんが、ご自宅のリノベーション経験を本にされました。
複雑な事象を分析してわかりやすい言葉で正確に伝える、ちきりんさんらしい、素敵な本です。
詳しくは本をお読みいただくのがいいと思いますが、印象に残った点を少しご紹介します。
「共同プロジェクト」という考え方
この本ならではの視点で、書評でも多くの人が挙げているのが、消費社会の取引には二つの種類がある、という点です。一つが「モノを売買する=モノと金銭を等価で交換する」という取引形態。
売り手が100円と定めた商品を、買い手は100円の貨幣価値があると認めて、両者が交換し合う取引形態。
もう一つが「売り手と買い手が協力して価値を創出し、生み出した価値を両者が分け合う」共同プロジェクトという形態。
医療、教育などが典型で、売り手は専門性の高い業務と時間を提供し、買い手は売り手の専門性の発揮に協力することで、両者がプロジェクトの成功という価値を得る、という考え方です。
この本では住宅のリノベーションがそれにあたる、と指摘しています。
リノベーションのみならず、注文住宅の家づくりも、正に共同プロジェクトと言えるでしょう。
そしてこの本が他の本と違う、ちきりんさんならではの視点がその先にありました。
ご趣旨をこのように理解しました。
この世界にまだ存在しない結果を共同で作り出すプロセスには、困難が伴うこともある。
問題が発生するのは当たり前、その際は両者が協力して解決を目指す。
買い手には、信頼でき、問題解決に協力できる相手選びが、求められる・・・。
共同プロジェクトでは買い手もプロジェクトの参加者になる、メンバーの組織が重要というご指摘に、肯首しました。
経験者ならではの言葉
「予算でかっこをつけない」「予算もスケジュールも自分次第」「他人の意見を聞き過ぎない」など、ほかにもたくさんの至言が散りばめられて、リノベーションのみならず、注文住宅をお考えの方にもぜひお読みいただきたい本です。
思わず膝を打ってしまった箇所に、ショールームで舞い上がって予算が大きくなってしまった、というところがあります。
心を奪われる商品を前に理性で制御できなくなるのは、セレブでも同じ。
著者を身近に感じたエピソードです。
経験者には「あるある」満載、マイホーム希望者にはリノベーションや家づくりの本質を教えてくれる良書。
広く読まれて、家づくりがもっと身近になることを願います。