京都の建築家が教える注文住宅のツボPoint in the order housing @Kyoto
column22 家づくりの失敗? 2019.04.02
■失敗か成功かより、生活の反映を
これまでの設計物件で、「もっと良くなったかな。」と思う物件はあります。
何をかくそう、うち「竹林風洞」はその代表でして。
面積も採光も風通しも良く、住み心地は楽園ですが、細かなところで「こうしておけば・・・」と思うことは多々あります。
「キッチンはやっぱり、キッチン屋さんにお願いしたらよかったかな。」
「家具はもっといい材料を使ったらよかった。」
「壁は珪藻土だけじゃなくて、一部を化粧仕上げにしてもよかったかも。」
あとから考えると、いくらでも思いつくものです。
それを「失敗」と呼ぶかは別にして、それが家づくりです。
家を建てるのは人生のある時期ですが、住むのはそれ以降の数十年。
家は建てた時の価値観が固定されますが、住む人の価値観や経験・知識は、時間とともに変化します。
そこにギャップが発生して、後年「こうしておけばよかった。」と思うところが出てくるのは、自然なことです。
一方で家づくりは、手にする資産価値も、かける費用も、人生の大仕事。
「失敗したくない。」と思うのは、当然です。
だから、これから家づくりをお考えの方にお伝えしたいのは、
「みんな失敗するんですよ。」
「家を建てたら、それも楽しめるようになりますよ。」
わたしたちが「この家は大成功だな」と思う物件は、案外、お施主様の肩の力が抜けている場合が多いようです。
それは、お施主様のご依頼内容が、大まかにして明確、建築家に信頼をおいていただける物件です。
「家は、家族がいつも一緒にいられる気持ちいい場所にしたいです。」
「あとはよくわからないのでよろしくお願いします。」
そんなリクエストが、お施主様の満足度も上がり、雑誌やwebサイトで大人気になる物件の共通点のようです。
設計に入ると、お施主様は様々な選択を迫られます。
駐輪台数、キッチンの形状、シャワーヘッドの種類、寝室の扉は引き戸か片開きか。
普段の生活で考えたこともないような選択を次々と進めるうちに、提案図面は、お施主様の家に変化していきます。
肩に力を入れなくても、出来上がる家は、住む人の価値観を十分に反映します。
大きな言葉を使うと、家を建てる行為は生き方そのもの。
たどり着けなければ失敗と判定されるような、一つの正解を探し当てるゲーム、ではありません。
未来の自分が過去の判断をどう評価するかより大切なことは、今、どう生活するか。
等身大の生き方を反映できたら、家づくりは大成功です。